研究領域 | 植物生態学・分子生理学コンソーシアムによる陸上植物の高CO2応答の包括的解明 |
研究課題/領域番号 |
21114007
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
寺島 一郎 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40211388)
|
研究分担者 |
野口 航 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80304004)
種子田 春彦 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90403112)
|
研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | FACE / 地上部/地下部比 / オーキシン / サイトカイニン / ABA / 気孔 / 葉肉 / アポプラスト |
研究実績の概要 |
1) 植物の葉の呼吸系の高CO2応答:つくばみらいFACEシステムで栽培したイネ2品種の栄養成長期の展開葉を用いて、呼吸系遺伝子の発現量、炭水化物量および呼吸速度を測定した。デンプン量はFACE区の方が高かったが、呼吸速度は、FACE区ではambient区より低い傾向であった。また、呼吸系遺伝子の発現は、シロイヌナズナと全く異なるパターンを示し、FACE区では日内変動が小さくなった。 2) 高CO2環境における「地上部/地下部比」低下メカニズムの解析:C供給が増加する高CO2環境では、地上部よりも地下部の成長が促進されやすい。本年度は、(1) 低pH・高CO2環境における根の選択的な成長は、根の平均側根長ではなく、側根数の増加によること、(2) CO2特異的な応答であり、糖添加では再現できないこと、(3) サイトカイニン(CK)合成変異株では、根の選択的な成長が起こらないこと、(4) 低pH・高CO2環境において、地上部のC化合物、オーキシン含量、オーキシン極性輸送体の発現レベルが増加すること、(5) 地下部のオーキシン含量が増加し、tZ型CK含量が低下することを明らかにした。CKはオーキシン極性輸送体を負に調節することによって側根形成を阻害することが知られる。本研究の結果は、高CO2環境における地上部/地下部比の制御にオーキシンが関与することを示唆している。 3) 気孔コンダクタンスと葉肉コンダクタンスのCO2応答:剥離表皮を葉肉に載せる実験系を使って、気孔のCO2応答には、アポプラストに存在する、葉肉組織由来の気孔開度調節物質(葉肉シグナル)が関与することを示した。葉肉コンダクタンスは高CO2濃度環境で低下する。この応答にABAが関与することを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3つのプロジェクトが順調に進行している。それぞれのプロジェクトの担当者は鋭意研究の進行につとめた。
|
今後の研究の推進方策 |
1) 植物の葉の呼吸系の高CO2応答―FACEイネを用いた解析―:測定を反復し、一次代謝産物量を比較する予定である。 2) 高CO2環境における「地上部/地下部比」低下メカニズムの解析:高CO2環境における地上部/地下部比の制御にオーキシンが関与することを実証する。 3) 気孔コンダクタンスと葉肉コンダクタンスのCO2応答:葉肉組織由来の気孔開度調節物質(葉肉シグナル)を特定する。葉肉コンダクタンスに関しては、ABA添加前後の維管束組織、葉肉細胞における、アクアポリンの発現レベル、リン酸化レベルの変化を明らかにする。
|