計画研究
分子生物~地球生理生態モデルのコンソーシアムの中で、主に光合成・呼吸と気孔コンダクタンスに関する生理生態レベルの野外モデル研究を遂行する。アジアで唯一の樹木を対象にしたFACE(開放系大気CO_2増加実験)と育種材料を用いた森林CO_2固定機能の実験を用いて、越境汚染を含む窒素負荷が樹木個体群に及ぼすモデルパラメータを野外実験から提供する。具体的には、気孔開閉のメカニズムを分子生理レベルの情報を得つつ生理生態データ(葉量と光合成関連データ)の推移を個葉・個体・群集レベルへとCNバランスから評価する。CO_2の影響は、先行研究から土壌の栄養条件の影響を大きく受けることが指摘される。世界には温帯と針葉樹林帯の移行帯森林が3ヶ所に広がるが、本邦は脆弱であり変化が最も明瞭に現れる地帯と位置づけられ、その上、土壌条件が異なるので、特徴ある火山灰土壌に注目する。また、バイテク苗による林相改良試験地を使用して森林レベルのCO_2固定とCNバランスを詳細に解析する。対象とする植物は、成長が早くCO_2貯留能の高いカンバ類とグイマツ雑種F_1である。植栽後2年目では、葉面積指数(LAI[m^2/m^2]:単位面積当りの葉面積)、根の成長モニター、携帯型光合成蒸散速度測定装置による光合成機能評価を行った。高CO_2では、LAIが増加したが樹種間差は大きかった。ダケカンバで落葉が遅れたため、秋に対照では0である時期に約2.2を維持していた。ウダイカンバでは個葉の面積が約20%大きく、シラカンバでは同時枝の生産が約1.8倍であった。また、ライゾトロンによって根の定量的データを得るために画像と実測値を結ぶ検量線を作製した。貧栄養条件ではF_1の光合成には光・CO_2濃度が飽和時での値が、対照に比べて低い光合成の「負の制御」が見られた。
2: おおむね順調に進展している
中間評価では、「野外実験であり樹木が対象であるため時間のかかることは理解するが、成果が出ていない」、というコメントが届いている。しかし、モデルに提供するLAIの精度高いデータは提供できており、また、国際樹木生理学分野では最高水準の雑誌に報文は掲載された。植え付け後2年目になったので、本格的な成果が出せる状況になったと考えて(2)の自己評価を行った。
野外実験なので、年次変動が、一般にはかなり大きい。このため、通常は3年間の継続調査の結果を公開するように心がけてきた。しかし、プロジェクトはあと2年で終了するので、成果を出せる内容から公開する。施設の維持管理が成果を左右するが、これまで管理を行っていた研究分担者が退職したため、後任に同じ研究分野の方を当てる。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Atmospheric Environment
巻: 54 ページ: 277-281
Tree Physiology
巻: 31 ページ: 965-975
Landscape and Ecological Engineering
巻: 8 ページ: 59-67
http://www.agr.hokudai.ac.jp/fres/silv/index.php?%BF%B9%CE%D3%C0%B8%CD%FD%C0%B8%C2%6#content_1_7