研究概要 |
光合成,成長速度、繁殖など生態系の環境応答を予測する上で重要な表現型パラメータと環境要因との関係を定量的に表す数理モデルを構築することを目的に研究を進めている。 -世界各地に自生するシロイヌナズナのエコタイプについて競争実験を行った。20エコタイプの種子を混合して播種し、40日後の生重量によって勝敗を判定した。その結果、孤立ポットの生育実験で成長速度が高いエコタイプが競争に強いとは限らないこと、高CO2での勝ち負けには地上部/地下部比が、低CO2での勝ち負けには葉の窒素濃度が相関し、CO2条件によって奪い合う資源に違いがあることが示唆された。 -光合成の高CO2応答に異常がある変異体をいくつかスクリーニングし、うちいくつかの遺伝子マッピングを行っている(進行中)。 -複数のCO2噴出地の高・通常CO2域からオオバコの種子を採取し,同じ環境で育成し,葉の形態を比較した。その結果,高CO2域から得られたオオバコは気孔サイズが小さいという共通した変異が見られた。この高CO2域の植物が高CO2環境に適応進化していることを示唆する。 -農業環境技術研究所によって設置された水田イネFACE実験において、CO2がイネの葉面積動態に与える影響を解析した。葉面積生産は施肥により増加したがCO2上昇の影響を受けなかった。枯死葉面積はCO2上昇、施肥により増加した。積算日葉面積と葉面積平均滞在時間は施肥により有意に増加したが、CO2間に有意な差は見られなかった。幼穂形成期以降、葉窒素の50%-75%が穂に転流し、枯死葉が増加した。積算日葉窒素量は施肥により増加したが、FACEで小さくなった。平均滞留時間は施肥による有意差は見られなかったが、FACEで小さくなった。光合成系の高CO2への順化があったことを伺わせた。 -鳥取大学にOTCを設置し,落葉樹と常緑樹の各3種の光合成,成長のCO2上昇への応答を調べている。
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