植物CO2応答の広域評価に関する推定精度向上を図るべく、陸域生態系モデル高度化、メタ分析によるデータ収集、そして温暖化予測に用いられる気候・生態系結合モデルに関する研究を実施した。今年度は、生態系の構造と機能を結ぶ重要なパラメータである葉面積指数(LAI)に関するメタ分析と、気候・生態系結合モデルに関する検討を行った。 葉面積指数に関するメタ分析:葉面積指数(LAI:葉の投影面積[m^2]/土地面積[m^2])は、植物群落の葉量を示す構造的指標であるだけでなく、光合成や蒸散といった生態系機能の指標でもある。LAIの決定要因は、水分収支や窒素利用など生理生態学的観点から解析されてきたが、現実の生態系は複合要因に支配されており、植物機能タイプ毎に応答が異なるため、既存の生態系モデルではLAIの予報精度は必ずしも高くない。このようなLAIの曖昧さは高CO_2環境下での植物応答を予測する上でも大きな不確定要因となり得るため、その精度を高めるべく、様々な植物群落のLAIに関するメタ分析を進めた。Web of Scienceなどの文献データベースや、ORNL/DAACなどのデータサイトを参照し、約5000本の関連論文を収集して入力し環境要因との相観など予備的な解析を行った。 気候-生態系結合モデル:陸域生態系モデル研究の出口の一つは、将来の温暖化予測に用いられる気候-生態系結合モデル(地球システムモデル)への貢献である。IPCC第4次報告書までは、簡便な炭素循環モデルであるSim-CYCLEを結合していたが、最近では植生分布の時間変化を内生的に予測するSEIB-DGVMを開発して気候モデルと結合を行っている。このような気候-生態系結合モデルに関する研究の最新状況を総括しコンソーシアムデータを用いた高度化の指針を検討した。
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