研究領域 | 植物生態学・分子生理学コンソーシアムによる陸上植物の高CO2応答の包括的解明 |
研究課題/領域番号 |
21114010
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研究機関 | 独立行政法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
伊藤 昭彦 独立行政法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 主任研究員 (70344273)
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キーワード | 地球環境 / 生態系モデル / CN循環 / 植物生理生態 / 順化 |
研究概要 |
大気CO_2濃度上昇に対する植物応答を、広域スケールで評価するためのメタ分析と生態系モデル開発を進めた。メタ分析については、植物の受光・炭素獲得や水利用に深く関係する葉面積指数を対象として、文献収集を行い、そのデータを解析することで温度・水分傾度に対するグローバルな傾向を明らかにすることができた。その成果を学術論文にまとめて投稿した。植物の機能的パラメータのうち、より重要なものを特定するための感度実験研究を行った。大気CO_2濃度上昇時に葉の構造が変わり、葉内の拡散係数が高まるという観察例があり、その影響を調べるために陸域モデルを用いたシミュレーションを行った。大気CO_2濃度上昇時に葉肉抵抗が増加することで、光合成のCO_2応答がある程度抑制され、植物の長期応答に影響を与える過程の一つである可能性が示唆された。また土壌からの無機窒素吸収は、植物の窒素制限を介した順化機構として重要性が示されているが、現在の陸域生態系モデルでは根圏機能の扱いは非常に簡便化されており、将来予測の不確実性要因となる可能性が高いことが問題となっていた。そこで、植物の根からの窒素吸収に関するメタ分析を行い、窒素要求量、細根量、無機窒素利用可能量などの要因を考慮した新たな無機窒素吸収モデルに向けた研究を開始した。また、大気CO_2増加および気候変動が陸域に及ぼす影響推定に関するモデル相互比較プロジェクトに参加し、IPCC報告書の気候シナリオに基づいて植物応答のモデル不確実性を定量的に評価するための研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
広域スケールのメタ分析について、葉面積指数に関する解析を行い論文にまとめて投稿した。葉の窒素・リン組成に関するメタ分析も進展させた。大気CO_2増加に対する植物応答について、広域モデルによるシミュレーションを予定通り実施した。
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今後の研究の推進方策 |
植物応答に関するコンソーシアムに貢献するため、生理生態的なデータを統合するメタ分析やモデル開発を推進する。新たに問題点として特定された、土壌からの無機窒素吸収に関するメタ分析とモデル化を進める。IPCC報告書で使用された気候シナリオを用いて、将来の大気CO_2増加に伴う植生応答の広域評価を実施する。
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