AGOサブファミリーについては、アガロースネイティブを用いてpre-RISCと成熟体RISCの識別が可能なヒトのAgo2をモテルとし、機能未知であったNドメインに変異を導入したものをいくつか作成したところ、Ago2への二本鎖RNAの積み込みは問題無く起こるものの、その後の一本鎖化に異常が生じるものが多いことが明らかになった。この傾向は、前年度に解析したショウジョウバエAgo2の挙動とは大きく異なっていた。また、ヒトAgo2のNドメイン変異体の異常は、ミスマッチを多く含むmiRNA様の二本鎖RNAを用いることで、レスキ」ユーできることも明らかとなった。よって、少なくともヒトAgo2においては、Nドメインは二本鎖RNAをAgo2に積み込む段階ではなく、そのあとの一本鎖化に何らかの役割を果たしていることが示唆された。さらに興味深いことに、ヒトAgo2のNドメイン変異体においては、siRNA様のミスマッチを含まない二本鎖を用いた場合、RISC形成過程中のパッセンジャー鎖の切断にも強い異常が生じる一方、miRNA様の二本鎖によってRISC形成の異常をバイパスさせた後に標的の切断を行わせた場合は、ほぼ野生型同様の切断活性を示すことが明らかとなった。このことは、これまで基本的に同一の反応機構であると思われてきた、パッセンジャー鎖の切断反応と標的の切断反応は、一部異なるメカニズムが存在することを強く示唆している。PIWIサブファミリーについては、これまでに同定したカイコSIWIおよびAGO3に結合するタンパク質をカイコ培養細胞中でノックダウンあるいは過剰発現し、piRNAの生合成量やPIWIサブファミリータンパク質の局在等の解析を行った。また、カイコ胚を用いたpiRNA生合成経路の観察も行った。
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