研究領域 | 非コードRNA作用マシナリー |
研究課題/領域番号 |
21115002
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
泊 幸秀 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 教授 (90447368)
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研究分担者 |
塩見 美喜子 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20322745)
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研究期間 (年度) |
2009-07-23 – 2014-03-31
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キーワード | 遺伝子 / 発現制御 / 核酸 / 蛋白質 |
研究概要 |
小分子RNAのエフェクター複合体であるRISCの中核を成すタンパク質のうち、AGOサブファミリータンパク質については、RISC形成過程およびRISCが標的を切断する過程をより詳細に解析すべく、小分子RNA二本鎖の片方の末端の、RISC形成には影響を与えないと考えられる箇所を蛍光色素で標識し、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を観察することを試みた。その結果、蛍光標識によってRISC形成が阻害されないことは定量的に確認されたものの、感度の問題が明らかになったため、一分子イメージングによる解析を行うこととした。その結果、小分子RNA-Argonaute複合体形成の解析を高い精度で達成できることを示唆する新たな知見を得たため、一分子イメージングによる蛍光観察系の構築と最適化を行った。また、PIWIサブファミリーに結合するpiRNAの生合成過程のうち、最終段階の3’末端の削り込みに働くと考えられる、活性は明らかながら未だ実態が不明な「トリマー」の同定を目指し、古典的なクロマトグラフィーによる精製の条件検討を行った。その結果、密度勾配遠心による精製を行うことにより、これまで以上の効率で活性を濃縮できることが明らかとなった。さらに、これまでにPIWIサブファミリーとの相互作用が明らかとなった多数の因子について、抗体の作成や、ノックダウン・過剰発現を用いた機能解析を行ったところ、カイコBmN4におけるpiRNA増幅機構の因子としてSpnEとQinを同定した。両因子ともSiwiと結合する因子であるにも関わらず、異なった種類のトランスポゾンの抑制に関わるという結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Argonauteファミリータンパク質はすべての小分子RNA作用マシナリーの核心因子であり、恒常的に発現する AGOサブファミリーと生殖細胞特異的なPIWIサブファミリーに分類される。AGOサブファミリーについては、当初の目的である機能ドメインの同定やその生化学的解析がほぼ完了したため、さらに研究を深化させるべく、新たに一分子イメージングなど生物物理学的な新しい手法を導入するに至った。また、PIWIサブファミリーについても、生合成過程の一部の試験管内での再現成功に基づく、生合成因子の同定を精力的に進める一方で、既知因子についても多数の良好な特異抗体が得られており、それを用いた機能解析が進んでいる。従って、本研究は当初の計画以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
AGOサブファミリーについては、AGOの機能ドメイン相関に着目することにより、引き続き小分子RNAとAGOタンパク質エフェクター複合体(RISC)の形成過程および標的認識メカニズムの生化学的・生物物理学的解析を進める。そのため、一分子イメージングの実験系をさらに最適化するとともに、ショウジョウバエのAgo2をモデルとして、RISCが形成する過程をリアルタイムで捉えることを試みる。またPIWIサブファミリーについては、「トリマー」同定を目指し、古典的なクロマトグラフィーによる精製の条件をさらに最適化するとともに、3’末端削り込み反応の性質に基づいて、候補因子の絞り込みを行う。また、SpnEとQinの対するモノクローナル抗体を作成し、それぞれに特異的に結合する因子およびRNAを解析することによってそのメカニズムの解明を試みる。
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