非コードRNAには、mRNAと同じシステムで転写や成熟プロセスを受けると考えられながらも、核外に移送されず核係留される性質を持つ分子が見られるが、そのような性質がmRNAの化学修飾、特に核外輸送にも関与するとされる5'末端キャップ構造とどのような関連があるかに注目し、RNA5'末端領域の詳細な解析を行った。これまでにXist RNAを多く発現するE16マウス胎児より調製したトータルRNAから、Xist配列特異的な2種の合成DNAを設計し、1種目のDNAとRNase Hを用いて5'末端領域を含む部分断片を切り出し、2種目のDNA配列との相補性によるアフィニティー精製により断片の濃縮に成功した。この方法は対象Xist RNAの末端以外にも多くのRNAの特定の領域の濃縮に適応可能な手法である。DNAの設計と初発のRNA量と精製度が濃縮操作後の断片の精製度に影響するため今後の条件最適化が必要となることも判明している。Xistの5'末端断片の質量分析から、5'末端がcap1構造であることが示唆され、通常のmRNAにおけるcap2とは異なることが考えられた。末端構造の違いが核係留性との関連について今後も詳細な構造決定を進める。また、非コードRNA全般における未知の化学構造を質量分析で検出し構造決定する技術開発という点において、古細菌を対象にしたイソロイシンtRNAのアンチコドンに見出された新規修飾アグマチジンの構造決定、生合成遺伝子と基質の決定、タンパク質合成における機能解明への寄与があった。
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