計画研究
非コードRNAには、mRNAと同じ機構で転写や成熟プロセスを受けながら核外に移行せず核内に係留されるタイプの分子が見出される。核係留型RNAの化学修飾変化とプロセシング制御にどのような関連があるかに注目し、RNA末端領域の修飾構造の解析を行っっている。MALAT1の3'末端近傍に存在するtRNA様の構造(mascRNA)が、RNaseP活性による5'末端切断およびRNaseZ活性による3'末端切断を経てtRNA様構造の切り出しが行われると共にpolyA配列の付加が起こる現象が知られている。これまでにマウス由来mascRNAの解析から部位特異的な1-メチルアデノシン(m1A)修飾と思われる修飾の検出を行ったが、更にmascRNA修飾因子の同定を試みるため、ヒトのm1Aメチル化酵素の候補であるTRMT61A、TRMT6をsiRNAでノックダウンし、m1A修飾やmascRNAの量的変動を評価することでmascRNA修飾因子の同定とプロセシングへの影響の評価を試みた。m1Aが逆転写を強く阻害する性質から、標的特異的な逆転写プライマーを用いた定量的RT-PCRを用いたが、mascRNA量の変動も起こっていることを考慮し、標識逆転写プライマーを用いた伸長の阻害の検出やmascRNA前駆体をノーザンハイブリダイゼーションで検出するなど複数の評価系からの総合的な解釈が必要であり引き続き解析を行う。また、2型糖尿病のリスクアレルの1つであるCdkallの機能について、tRNA-LysのA37位に特異的な2-メチルチオ化修飾遺伝子であることを示し、RNAの修飾欠損がもたらす機能的意義を明らかした研究を含め、RNA修飾による構造変化がもたらす表現型への影響を明らかにする研究への寄与があった。
2: おおむね順調に進展している
RNA分子種の解析により新たな部位に見出された修飾の因子の特定が進行している。また、RNA末端に限らず長鎖RNA分子の保存された高次構造中に修飾が導入されうる可能性を示唆する結果と言え、RNA分子中の修飾の網羅的探索や代謝・機能発現制御に関わる研究に広がる可能性を誘起しうると考えている。
長鎖RNAに由来するRNAに見出された修飾構造を形成する因子の同定と機能的意義の解析とを行うと共に、長鎖RNAに見出されるRNAプロセシングに伴う構造変化の特定を引き続き行う。長鎖RNAの、末端に限らず導入される修飾が導入されうるというこれまでにあまり見られなかった概念に基づき修飾構造と部位の探索を進めたい。RNAの単離・分析を行うために必要なグレードのRNAを得るために、適切なスケールでのRNAサンプルの調製・前処理法を常に検討する必要がある。同じRNAで言えるものであっても由来する生物種や組織が異なると共存する夾雑物もかなり異なっており、サンプル毎に適した処理を行うことが重要である。
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