研究領域 | 非コードRNA作用マシナリー |
研究課題/領域番号 |
21115003
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 健夫 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (90533125)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | RNA / 転写後修飾 / メチル化 / プロセシング |
研究実績の概要 |
核係留型非コードRNAであるMALAT1の 3'末端近傍に存在するtRNA様構造(mascRNA)はRNaseP活性による5'末端切断およびRNaseZ活性による3’末端切断を経てtRNA様構造の切り出しが行われると共にpolyA配列の付加が起こるプロセシング経路が知られている。マウスmascRNAのLC/MS解析によりある部位のアデノシンがメチル化されていることを見出したことから、mascRNAメチル化修飾因子の同定を進めた。mascRNA メチル化部位の2次構造中の保存性から1-メチルアデノシン(m1A)と推測し、ヒトtRNA m1Aメチル化酵素複合体の構成要素であるTRMT61A、TRMT6をHeLaにおいてsiRNAでノックダウンし、m1A修飾状態の量的変動を評価した。m1Aが逆転写を強く阻害する性質から、修飾部位の下流に設計した32P標識逆転写プライマーを用いて伸長反応阻害の解除を検出したところ、mascRNAのメチル化修飾部位における逆転写阻害が解除されたことからmascRNAのメチル化修飾はm1Aであり、tRNAメチル化酵素複合体であるTRMT61A、TRMT6によって修飾を受けることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RNA分子の解析により、新たな部位に見出された修飾因子の特定に進展があった。従来知られていた基質であるtRNA以外へのメチル化を行いうるという結果は、RNA転写産物全般に未同定の修飾部位が広く存在する可能性を示唆しており、今後も修飾構造の網羅的探索や新規部位修飾の機能解析といった研究に広がると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
mascRNAのm1A修飾率は完全ではなくパーシャルであったため、TRMT61AやTRMT6のノックダウンや過剰発現を行う事でmascRNA の修飾率の変動と、MALAT1-mascRNAの3'プロセシングや細胞内動態に与える影響をLC/MSやノーザンハイブリダイゼーションの解析で探る。mascRNAがm1A修飾を受けることの機能的意義を見出したい。また、様々なRNAに未同定の修飾が導入されているという概念の実証のためm1Aを実例とした修飾部位の幅広い探索を検討したい。様々な条件検討が必要と考えられるものの、触媒活性残基に変異を導入しRNA結合能は維持するが修飾活性を失った変異体酵素をベイトにしたRNA沈降法により修飾が導入されるmRNA候補の絞り込みが考えられる。tRNAをポジコンとし、更にデータベースから探索した、mascRNA/tRNA様構造を持ちm1A修飾部位に保存性がある部分配列を持つ遺伝子がベイトにより濃縮されるかを定量PCRで評価する。最終的にはベイトにより濃縮されたRNAの大規模配列解析により、より広範なターゲットRNAの抽出が可能となるよう検討していきたい。
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