研究概要 |
細胞内には内在性のmiRNA(endo-miRNA)が過剰に存在し、Argonauteタンパク質を含むRNAサイレンシング実行分子であるRNA-induced silencing complex(RISC)中に飽和して存在していると考えられる。そのため、細胞に外部からmiRNA(exo-miRNA)を導入した場合や、細胞内で新たなmiRNAの発現が誘導された場合には、内在性のmiRNA(endo-miRNA)がexo-miRNAによってRISCから追い出され、endo-miRNAのターゲットmRNAの抑制効果が緩和され、発現量が上昇するという影響があらわれる事が考えられる。本年度は、マイクロアレイ法や、ルシフェラーゼレポーターアッセイなどを用いて、このようなendo-miRNAターゲット遺伝子の発現量の変動を解析した。その結果、Endo-miRNAターゲット遺伝子の発現量は、exo-miRNAを細胞へ導入することによって上昇することがわかった。その上昇の程度はexo-miRNAの種類によって異なるが、endo-miRNAの種類には依存しないことがわかった。さらに、exo-miRNAによるRISC置換効率の定量化を試みた結果、置換効率はmiRNAの末端と中央部の熱力学的安定性と強い相関があることが明らかとなった。ヒトでは約1,000種のmiRNAが同定されているが、今回の結果に基づき、5'末端がAまたはUの215種類のヒトmiRNAにおけるRISC置換効率の計算を行ったところ、miRNAの種類によってRISC置換効率は大きく異なることがわかった。
|