計画研究
前年度までの解析によって,Smchd1相互作用因子であるHbix1の機能欠損マウスはホモ接合体が雌雄ともに正常に誕生し,子孫も作ることがわかった.マウスの遺伝的背景によって表現型に違いがみられるか調べるために,C57Bl/6との交配を5世代繰り返したが,これまでのところ表現型に大きな変化は認められていない.hnRNP U改変マウスの誕生が年度開始当初の予想よりも遅れたが,機能欠損アリル,条件的機能欠損アリル,いずれについてもヘテロ接合体を得ることができた.しかし,hnRNP U欠損ヘテロ接合体同士の交配を開始してからまだ日が浅いため,これまでのところホモ接合体の表現型については結果が得られていない.Smchd1との相互作用因子の候補として着目するCux1については,不活性X染色体をもつ培養細胞で強制発現を試みたところ,発現ベクターの導入効率は悪かったものの一部の細胞でCux1が不活性X染色体に局在するものが認められた.また,FLAG-Cux1の安定発現株ではSmchd1抗体を用いた免疫沈降によって,FLAG-Cux1の共沈降が確認されている.熊本大学生命資源研究支援センターよりCux1改変マウスを入手し,ヘテロ接合体同士の交配を行ったところ,ホモ接合体の約半数が雌雄の区別なく離乳までに死ぬことがわかったが,これまでのところX染色体不活性化との関連は見出されていない.Cux1以外の候補についてもクローニングを行っている.
3: やや遅れている
遺伝子改変マウスの作製は,若干の遅れはあったものの想定内でおおむね順調に進んだ.しかし,Hbix1改変マウスに顕著な表現型が認められなかったことは,これがSmchd1の相互作用因子であることを考えると意外な結果であった.現在,遺伝的背景による効果等を検討するための戻し交配を重ねるのに時間を要している.hnRNP Uについては機能欠損アリルと条件的欠損アリル,それぞれを持つマウスが得られた.まもなく,機能欠損アリルホモ接合体の表現型が明らかになると期待している.Smchd1との相互作用因子の候補は分子量の大きいものが多く,全長cDNAのクローニングに手間取っている.
Hbix1欠損ホモ接合体マウスの背景にSmchd1変異をヘテロ接合体の状態で導入することでHbix1とSmchd1の遺伝的相互作用の有無を調べる.また,Smchd1もホモ接合体とした場合,Smchd1単独のホモ接合体の表現型をさらに重篤にするかも調べる.hnRNP U欠損ホモ接合体の表現型いかんで,条件的機能欠損アリルを用いた解析を行う必要があると考えている.その場合,hnRNP U欠損を任意のタイミングで誘導できるようにするため,タモキシフェン誘導によるcreリコンビナーゼの発現を可能にするトランスジェニックマウスとの交配を行う.この系に加えES細胞の分化系を用いることで,X染色体不活性化の各過程におけるXist RNAの作用や機能を調べることも可能になると考えている.Smchd1との相互作用因子についてはCux1以外のもののクローニングを行い,蛍光蛋白質との融合蛋白質が不活性X染色体に局在を示すか調べることで,さらに解析を進めるか否か判断する.Cux1改変マウスの解析については,Hbix1同様,Smchd1との遺伝的相互作用の有無を確認する.
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 4件)
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