計画研究
小分子RNA作用マシナリーが果たす生理機能とそのメカニズムの解析を目的として、本年度は以下の解析を行った。1.昨年度までの解析によって同定していた神経細胞の形態を制御するmiRNAの機能解析をさらに推進し、以下の結果を得た。(1)同定したmiRNA群の過剰発現をin uteroエレクトロポレーションの系を用いて行ったところ、初代培養神経細胞で得られた結果とほぼ同様な結果が得られたことから、注目しているmiRNAはin vivoにおいても神経細胞の形態を制御していることが明らかになった。(2)注目しているmiRNAのノックダウンコンストラクトを作製し、同様にin uteroエレクトロポレーションの系を用いてin vivo神経細胞におけるmiRNAノックダウンの効果を検討したところ、過剰発現と逆相関した結果が得られた。劇的な表現型を示したmiRNAに関しては、その欠損マウスの作出を行い、解析を開始した。2.(1)生殖幹細胞に相当する精巣特異的な小分子RNAであるpiRNAの成体精巣での役割を明らかにするために、胎仔期の精巣でのみMILIを発現するトランスジェニック(Tg)マウスを作製し、MILI欠損マウスと交配して、成体精巣特異的MILI欠損マウスを作製した。(2)MILI欠損マウスの精巣より樹立した生殖幹細胞に相当する細胞株であるGS(germ stem)細胞に、MILI遺伝子を導入し、MILI回復GS細胞を作製した。このGS細胞は、野生型のGS細胞よりもpiRNAの産生が亢進していた。また、通常piRNAは1次生成と2次生成過程で産生されるが、GS細胞は主に1次生成によりpiRNAが産生されていることを明らかにした。この細胞を用いて、MILI結合タンパクとしてミトコンドリアの外膜に存在するGPAT2を同定し、GPAT2がpiRNAに必須の分子であることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
1.当初の目的であった神経細胞の形態を制御するmiRNAを同定し、その機能解析や転写制御の解析をマウス個体レベルで行っており、小分子RNAの神経細胞における役割の解析がおおむね順調に進行している。胎仔期の精巣でのみMILIを発現するTgマウスの作製に時間がかかってしまったが、それ以外の遺伝子改変マウスに関しては、ほぼ順調に作製が進行している。
1.神経細胞におけるmiRNAの機能解析に関しては、脳高次機能における役割を明らかにする。また、miRNA自身の制御のメカニズムについて、特に細胞外環境との相関について解析を推進する。2.これまで準備をおこなってきた遺伝子改変マウスの表現型の解析をすすめ、精子形成過程におけるpiRNAの役割を明らかにしていく予定である。また、GS細胞を用いて、piRNAの産生のしくみを明らかにする。
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