計画研究
平成23年度の研究において、和田は、立体が制御されたホスホロチオエート結合を含むPO/PSキメラ型RNAの固相合成を検討した。特に、硫化反応と酸化反応条件の検討を詳細に行い、脱硫を伴わずに4種類の核酸塩基を有するリン原子の立体が厳密に制御されたホスホロチオエート結合を含むPO/PSキメラ型RNAを高収率かつ高立体選択的に合成することに成功した。一方、RNA型核酸医薬の効率合成を可能にする、新規2'水酸基保護基の開発も行った。穏和な中性条件下、DDQ(2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン)により脱保護される2'水酸基の新規保護基として、4-メトキシベンジル骨格を有するMBOM(4-メトキシベンジルオキシメチル)基を検討し、MBOMで2'水酸基を保護したウリジン3'-ホスホロアミダイトモノマー合成し、これを用いてウリジル酸10量体高収率で合成することに成功した。これらの研究成果は、非コードRNA医薬の合成研究に大きく貢献することが期待される。竹下は、光学非活性のホスホロチオエート化siRNAにおいて、配列上のPS結合位置の違いによって、RNA分解酵素に対する抵抗性が変化することを確認し、安定性が高くRNAi効果がより低濃度で発現可能なPS結合位置を同定した。また、ヒト乳がんや肺がん細胞株を移植し作成したがんモデルマウスにおいて、がん細胞由来の発光遺伝子を、乳がんモデルでは腫瘍内投与、肺がんモデルでは全身投与することにより、ホスホロチオエート化siRNAはPS結合を持たないsiRNAよりも低濃度で抑制することを示した。siRNAの非特異的な作用であるoff-target効果や副作用は、siRNAの大量投与によって惹起される可能性もあり、より低濃度で効果を発揮するホスホロチオエート化siRNAは、医薬応用に向け有用であることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
平成23年度は特に立体が制御されたホスホロチオエート結合を含むPO/PSキメラ型RNAの合成法の確立を目標に研究を行ったが、当初の目標は達成された。これと並行して、光学非活性なホスホロチオエートRNAを用いる酵素耐性、RNAi効果を評価する実験も予定通り進行しており、次年度は光学活性ホスホロチオエートを用いる実験が行われる予定である。
平成23年度に立体が制御されたホスホロチオエート結合を含むPO/PSキメラ型RNAの合成法が確立されたので、今後はsiRNAの様々な部位にリン原子の立体が制御されたホスホロチオエート結合を導入し、それらの酵素耐性、RNAi効果を評価する。それらの結果より、ホスホロチオエート結合の導入位置、絶対立体配置がRNAi活性に及ぼす効果を明らかにし、優れたRNAi医薬の創製を目指す。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (8件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
Proc.Natl.Acad.Sci.USA
巻: 109 ページ: 4263-4268
10.1073/pnas.1117560109
Chem.Soc.Rev.
巻: 40 ページ: 5829-5843
10.1039/c1cs15102a
Bioorg.Med.Chem.Lett.
巻: 21 ページ: 6285-6287
10.1016/j.bmcl.2011.09.003
J.Org.Chem.
巻: 76 ページ: 5895-5906
10.1021/jo200951p
Gene Therapy
巻: 287 ページ: 1397-1405
10.1038/gt.2011.73
J.Biol.Chem.
10.1074/jbc.M111.288662