平成25年度の研究において、和田は、昨年度に引き続き、立体が制御されたホスホロチオエート結合を含むPO/PSキメラ型RNAの固相合成を行った。立体が制御されたホスホロチオエート結合を5カ所導入したガイド鎖のPO/PSキメラsiRNAを高立体選択的に合成することに成功した。合成過程において、脱硫、分解等、複数の副反応が観測されたため、反応条件のさらなる最適化を行ったところ、目的物を高収率で得ることに成功した。一方、ホスホロチオエート誘導体に代わる次世代のRNA型核酸医薬として有望なボラノホスフェートRNA誘導体の新規合成反応を検討した。2’水酸基の保護基として、2-シアノエトキシメチル基を有するH-ボラノホスホネート誘導体をモノマーとして用い、固相法によりボラノホスフェートRNA 12量体の合成に成功した。今後、非コードRNAの作用機序の解明や医薬応用にボラノホスフェートRNAが活用されることが期待される。 竹下は、ホスホロチオエート(PS)結合を1カ所のみ導入したsmall interfering RNA(siRNA)(1PS-RNA)と、PS結合を5カ所導入したsiRNA(5PS-RNA)について比較検討したところ、RNA分解酵素により1PS-RNAが分解される時間を2倍以上延長しても、5PS-RNAは残存することが示された。また、5ヶ所のPS結合を導入する位置は、5’末端側よりも3’末端側でsiRNAの安定性が高く、ヒト乳がん細胞を移植したマウスに対して全身性に投与した実験において、3’末端5PS-RNAを投与した場合でのみ、原発巣で標的遺伝子の抑制効果が確認された。しかし、他の臓器への移行性も3’末端5PS-RNAが高く、5PS導入による組織特異性への影響は低いことが示唆された。
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