研究領域 | 哺乳類初期発生の細胞コミュニティー |
研究課題/領域番号 |
21116002
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
目野 主税 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (20311764)
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研究分担者 |
和田 洋 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (50212329)
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キーワード | 左右軸形成 / Wntシグナル / 細胞外シグナル / エンドサイトーシス / 小胞輸送 |
研究概要 |
Wnt3は、発生過程の様々な時期及び部位で発現し、発生現象を制御する分泌因子である。体軸形成の分子機構及びWntシグナル制御の意義を明らかにするため、Wnt3の発現制御の解析を行った。Wnt3を含むBACにLacZを挿入したトランスジェニックマウスラインを作成した所、Wnt3は初期体節期のノード辺縁において左右非対称に発現することが明らかになった。その発現は左側が強く、Noda1やCer12の左右非対称発現よりも早くから非対称性を示した。様々なゲノム断片をLacZに連結したコンストラクトをトランスジェニックマウス法で評価することで、ノードにおけるエンハンサー及びその活性を担うコアエレメントを同定し、Wnt3発現が複数のコアエレメントによって確立されることを明らかにした。また、Wnt3が耳胞背側に発現し、耳胞背側におけるWntシグナルのダイナミックな変化が、半規管形成に関与することが明らかになった。 初期胚臓側内胚葉(visceral endoderm)は顕著な極性を示す細胞によって構成される。母胎由来のIgGやシグナル分子は頂端側から取り込まれ、エンドソームを経由して頂端空胞(apical vacuole)に輸送される。この膜輸送には低分子量GTP結合タンパク質、Rab7,Fab1タンパク質の機能が必要であることを明らかにした。Visceral endoderm細胞のエンドサイトーシス機能に欠損をもつ変異胚では細胞内シグナル伝達の制御が異常となり、原腸陥入期前後のパターン形成が乱れることを明らかにした。これら一連の発見により、エンドサイトーシスによる細胞内シグナル伝達の調節が初期胚の時間的、空間的なパターニングの実現を制御していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ノードにおけるWnt3発現を担うエンハンサーを同定し、そのコアエレメントの役割を明らかにすることができた。小胞輸送の分子装置に変異をもつマウスの表現型の解析を順調に進めており,新たな変異マウスの作出も進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
Wnt3のノードエンハンサーを制御する転写因子を同定し、Wntシグナルの左右軸形成における役割を明らかにする。また、原条領域におけるWnt発現を制御する分子機構を解析する。原腸陥入異常を示すRac1変異マウスについて、胚体外外胚葉におけるRac1の役割を解析する。新たに作成したmVam変異マウスは胚体外外胚葉の形成と維持に欠損を示し,栄養情報のシグナル伝達系に異常をしめす。このマウス胚,あるいは培養細胞を用いて胚体外外胚葉の分化と維持の新たな機構を解析する。
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