初期胚では、細胞外シグナルの産生と受容が発生段階に応じて極めて短時間の間に変化する。しかし、如何なる機構により分泌因子の発現及びそのシグナル受容が制御され、初期発生の諸現象が可能になるかの知見は乏しい。本研究では、特にWnt及びBMPに着目し解析を進めた。まず、エピブラスト幹細胞 (EpiSC) はプライム型多能性幹細胞として注目されているが、培養が難しい欠点があった。私たちは、EpiSCの内在Wntカノニカル経路が分化傾向をもたらしており、これをXAV939で抑制することで安定したEpiSCの維持・樹立が可能になることを見出した。次に、左右軸形成の解析では、これまでにノードにおけるWnt3発現域はRBPjとFoxa2によって規定されること見出していたが、ノードにおけるNodal発現にも同様な機構が成立していた。さらに、DPATを添加してマウス胚を全胚培養すると、Crerl2やGdf1の発現も消失することから、ノードにおけるNotchシグナルはNodal関連遺伝子の発現をセットとして誘導することが示唆された。シグナル受容に関しては、これまでにエンドサイトーシス経路がBMPとWntのシグナル経路の時空間的なパターン形成に必須であることを明らかにした。そこで、発生段階とエンドサイトーシスの機能連関を明らかにするため、エンドサイトーシスの実態を可視化するマウスの作製を試みた。後期エンドソーム構成タンパク質Syntaxin-7 (Stx7) とGFPの融合タンパク質を発現する変異アレルを大腸菌人工染色体上に作製し、マウス受精卵に導入してトランスジェニックマウスを得た。様々な臓器でauthenticなタンパク質の発現パターンを再現できるGFP-Stx7ラインを得ており、これから得られたマクロファージで実際にエンドサイトーシス経路を可視化できることが確認された。
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