研究領域 | 哺乳類初期発生の細胞コミュニティー |
研究課題/領域番号 |
21116003
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
佐々木 洋 熊本大学, 発生医学研究所, 教授 (10211939)
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研究分担者 |
西中村 隆一 熊本大学, 発生医学研究所, 教授 (70291309)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | Hippoシグナル / 発生・分化 |
研究実績の概要 |
哺乳類の初期胚発生には細胞間の相互作用が重要な役割を果たしているが、細胞間接触による相互作用の果たす役割については、あまり知見がない。本研究ではHippoシグナル経路と転写因子Sall4に注目し、初期胚発生における細胞間接触によるコミュニケーションの役割(佐々木)と、コミュニケーションの結果起こった細胞分化が核内で固定化される機構(西中村)の解明を目的とし研究を進めている。今年度は、以下の成果を得た。 (1)着床前胚で細胞間接触情報による栄養外胚葉と内部細胞塊の分化制御機構の解明について、Angiomotin (Amot)とAmotl2の接着帯への局在がHippo経路の活性化に必須であること、さらに外側の細胞では、細胞極性により、Amotを接着帯から排除することでHippo経路を抑制していることを見出した。さらに、AmotのN末のリン酸化がHippo経路の活性化の鍵となっていることを明らかにした(佐々木)。 (2)エピブラスト特異的Sall4ノックアウトマウスの7.5日胚の始原生殖細胞において、体細胞プログラムが脱抑制されていることを、免疫染色を用いて確認した。さらにSall4を欠失した胚様体でクロマチン免疫沈降 (ChIP) を行い、Sall4がHDAC複合体をリクルートして、Hoxa1などの体細胞プログラム遺伝子を抑制することが明らかになった。西中村) (3)着床後胚の細胞動態のライブイメージングのためのノックインマウスを2系統作製した。また、Hippo経路を操作したモザイク胚を作製・解析し、細胞競合に関連すると思われる2種類の細胞間コミュニケーションが起こっていることを観察することができた。これらの現象について、ライブイメージングも含めてより詳細な解析を行っている(佐々木)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
着床前胚の細胞分化のHippo経路による制御について、短いレポートを論文発表し、さらに、当初の計画通り、AmotによるHippo経路の活性化機構を明らかにすることができ、これまでの研究成果をまとめた論文を投稿中である。Sall4の機能解析についても、当初の予定通り、研究成果が得られてきている。着床後胚については、ライブイメージングのための新たなノックインマウスを作製し、論文発表した。さらに、新たなHippoシグナルを介した新たな細胞間コミュニケーションが起こっていることを見出し、今後の研究を一層発展させるための手掛かりを得た。 これらの、状況から、それぞれの研究課題について当初の研究目的は十分に達成されており、(2)おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、研究は大きな問題もなく順調に進んできており、この調子で、研究を発展させる。来年度は、最終年度であることを考え、これまでの研究成果を、可能な限り論文の形にまとめて発表することを強く意識して研究を行う。 個々の研究について、着床前胚では、AmotによるHippo経路の制御には複数のあることがわかってきたので、N末以外による制御機構の解明を進める。着床後胚の細胞間コミュニケーションについて、新たな形のコミュニケーションが起こっていることを見出したので、その役割、分子基盤の解明を行なうことに力を入れる。
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