1) aPKC、およびPAR1の極性制御の分子機構を解明するための下流の標的因子の探索、解析。 aPKCの結合タンパク質探索をLg1を安定的にノックダウンすることによりaPKC/PAR複合体の活性を高めた培養上皮細胞状態において試みた。これまで検出されてこなかったaPKC結合タンパク質、p62の検出に成功したものの、新規なタンパク質を同定するには至らなかった。他方、PAR-1の下流因子としては、すでに同定済みの新規タンパク質、p250の解析を精力的に進めた。そして、PAR-1によるリン酸化部位を同定するとともに、PAR-1のキナーゼ活性が上皮細胞におけるp250の細胞内局在を大きく変化させることも見いだした。他方、p250がそのN末端のcoiled-coil領域を介して自己会合活性を示すとともに、C末端のリジン、アルギニン頻出ドメインを介して微小管と共局在し、微小管の安定化を顕著に進めるという非常に重要な知見を得た。そして、ノックダウン実験からは、p250が上皮細胞極性のみならず、神経細胞極性、および細胞分裂においても重要な役割を果たしていることを示唆する結果も得た。2) 細胞外基質制御を介してaPKC/PARシステムが集団的細胞運動を制御している可能性の検討。本年度は、PAR-1がUtrophinのスペクトリンリピート領域のスレオニン残基をリン酸化することでラミン受容体、DystroglycanとUtrophinとの相互作用に影響するという結果を得て、論文とした。一方、札幌大学の芳賀博士にPAR-1ノックダウン細胞を寄託し、このプロジェクトの基礎となる共同研究に着手した。
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