研究領域 | 哺乳類初期発生の細胞コミュニティー |
研究課題/領域番号 |
21116004
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
鈴木 厚 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 准教授 (00264606)
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研究期間 (年度) |
2009-07-23 – 2014-03-31
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キーワード | 上皮細胞 / 微小管 / PAR-1 / 細胞極性 / 中心体 |
研究概要 |
1) 新規PAR-1結合タンパク質、MARKAP1 (Mkp1; 旧名、p250)の解析をさらに集中的に進めた。その結果、① Mkp1はこれまで確認していたC末端領域以外に、N末端にも直接微小管に結合する部位を有することが判明するとともに、② 中央のコイルドコイル領域を介した2量体化したMkp1は、このN末端領域を介した微小管結合を通じて、微小管を架橋することが判明した。 2) Mkp1は、上皮細胞特有の微小管束構造に局在するとともに、非中心体性微小管が形成するこの微小管構造の発達にも必須であることが分子細胞生物学的研究から明らかとなった。こうしたMkp1の局在は、マウス初期胚のエピブラストにおいても観察されることから、初期胚上皮極性の発達においても同様の機能を果たしていることが推察された。 3) Mkp1自身はPAR-1の足場タンパク質としての機能を発揮している一方で、そのホモログであるMkp2の微小管制御領域はPAR-1によってリン酸化制御を受け、その微小管結合能が制御されている可能性が示唆された。 4) 興味深いことに、分化度の低い細胞において、Mkp1はゴルジ体に局在し、近年発見されたGolgi由来微小管の制御を介してゴルジ・リボン構造の形成に重要な役割を果たしており、この機能を介して細胞の極性を持った運動に必須な機能を果たしていることが示唆された。 5) Mkp1、および、aPKCの内在的阻害タンパク質であることを昨年度見いだしたKIBRAについてジーントラップES細胞を入手し、遺伝子改変マウスの作成と解析を進めた。Mkp1の発現を失ったマウスは小脳変性に由来すると思われる運動失調症状を示すものの、単独ノックアウトでは初期胚発生に異常を示さないことが示唆された。KIBRAの発現を失ったホモマウスは、生まれることが少なく、何らかの段階で胚性致死になっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中心的に進めている「新規PAR-1結合タンパク質の分子細胞生物学的機能解析」については予想以上の解析結果を得ることができており、遺伝子改変マウスの解析もMkp1, およびKIBRAに関して計画通りに展開できている。しかし、いずれのマウスも初期胚発生に顕著な異常を示すに至っておらず、研究内容を初期胚発生の研究にいまだ直接結びつける点で弱点を有している。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度より独立した研究室を主宰することから、研究環境、研究戦力が大きく変化する。限られた条件の中で最も効率的な成果を得るために、引き続き分子細胞生物学的研究を主軸として研究を展開する。個体レベルの解析については、Mkp1,2のダブルノックアウトマウスの作成を通じて打開を図る。また、初期胚解析をマウスレベルで精力的に進めている連携研究者(中谷)との協力を強化し、PARシステムの初期胚における働きを直接解析する試みも進める。
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