発生過程の3D細胞配置を再構築可能な画像解析法のドラフト作成を行った。データとしては、共同研究を行った計画班がH21年度はじめにおいて取得済みであったマウスの初期胚データ、およびH21年度後半に取得した高解像度データを対象とした。 計画に基づき、核の2D形状に関して細胞の位置を同定する手法を3Dに改良することを進めたが、3Dデータにおいて深さ方向の解像度の低さが大きな障害になることが判明した。この問題に対し、複数の画像解析アルゴリズムを開発しその有効性を検証するとともに、共同研究の計画班から新たな高解像度データの提供(H21.11月)を得て、より高画質のデータに適したアルゴリズムの検討とその性能限界の評価を行った。また3D空間内での細胞動態追跡に関しては、予備的な解析から各時間点での細胞位置の同定精度に結果が予想以上に大きく依存することがわかったので、今年度は核の位置同定精度の向上に重点を置いた。 本年度に開発した画像解析の有効性を確かめるため、目視で確認し誤認識を手動で補正するためのGUIプログラムを医療画像解析用に開発されたソフトウェアPlutoを活用し構築した。また、これを用いて、開発したプログラムの精度評価に必要な正解データの作成も行った。 以上の内容をまとめた論文を現在バイオインフォマティクス系の論文誌へ投稿準備中である。また数件対外発表を行った。 数理モデルの基礎開発に関しては、画像データからの多細胞位置情報の取得に予想外に時間がかかることが想定されたことから、極性形成・細胞接触・分泌因子などの発生の基本過程を対象とした数理モデル構築をすすめた。より具体的には、細胞内での分化制御機構を対象とした簡略化モデルを用い、細胞の増殖に伴い、分泌因子による細胞間相互作用によって細胞の分化状態がどのように固定化されるかのシミュレーションを行った。また細胞の分裂軸に関わる極性形成に関する基本的なモデルも構築した。
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