研究概要 |
病原体センサーは、病原体成分ばかりでなく、内因性物質を認識し、種々の炎症反応を惹起させる。この炎症を本領域では、「自然炎症」と呼んでいる。Toll様受容体(TLR)の中のTLR3, TLR7, TLR9は、病原体ばかりでなく、宿主由来の核酸も認識し、I型インターフェロン(IFN),炎症性サイトカイン産生を誘導することにより、自然炎症を引き起こす。本研究では、このTLR3, TLR7, TLR9シグナルの分子機構を明らかにすることを計画している。TLR3/7/9は、樹状細胞サブセットによって異なる発現様式、応答様式を示す。TLR7/9シグナルは、形質細胞様樹状細胞(pDC)において、大量のI型IFN産生を誘導する。この産生誘導には、pDCにおいて恒常的に高く発現されている転写因子IRFT-7が必須である。しかし、IRF-7は、PDC以外の樹状細胞、通常樹状細胞(cDC)においても、刺激後早期に高い発現が誘導されるが、cDCからは大量のI型IFN産生は認められない。このことから、pDC特異的に発現する未知の機能分子の関与が考えられる。遺伝子発現プロフィールを比較することにより、我々は、pDC優位に発現する転写因子Xを見出した。この転写因子は、IRFファミリーの中では、IRF-7と相乗的に作用し、IFN-α、IFN-βプロモーターを活性化した。また、この転写因子Xの遺伝子欠損マウスを作成、解析し、特にpDCの機能に障害が認められることを見出した。さらに解析を進め、XによるI型IFNプロモーター活性化機構、pDCにおけるTLR7/9シグナルの分子機構を解明することを計画している。
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