研究領域 | 内因性リガンドによって誘導される「自然炎症」の分子基盤とその破綻 |
研究課題/領域番号 |
21117003
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
改正 恒康 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 寄附研究部門教授 (60224325)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 樹状細胞 / 自然免疫 / 病原体センサー / 炎症 |
研究実績の概要 |
病原体センサーが自己由来内因性リガンドに応答する平衡状態、およびその破綻によって生じる種々の非感染性慢性炎症を本研究領域では、「自然炎症」と捉えている。本研究では、自己由来内因性リガンドとして、核酸に焦点を当てている。形質細胞様樹状細胞(pDC)は、核酸センサー(TLR7,TLR9)に応答してI型インターフェロンを産生するという特性を持ち、この特性は, SLEなどの自己免疫疾患の病態に関与する。pDC優位に発現する遺伝子群の機能的意義の解析を進めており、特に、Etsファミリーに属する転写因子Spi-BがpDCの特性に必須であることを主にSpi-B欠損マウスを用いて明らかにした。pDCにおいて、Spi-Bは、転写因子IRF-7と協調してI型インターフェロン遺伝子の発現を、転写因子NF-κBと協調して炎症性サイトカイン遺伝子の発現を増強していると考えられた。また、CD8α陽性樹状細胞(CD8α+DC)は、死細胞由来の2本鎖RNAをTLR3により認識し、炎症性サイトカインを産生すると共に、死細胞を貪食し、その死細胞由来の抗原に特異的な細胞障害性(CD8)T細胞の分化を誘導する能力(クロスプライミング能)が高いと言う特性を持つ。これらの特性がどのように炎症病理に関与しているかを明らかにするために、CD8α+DCを欠失させることのできるマウス(XCR1-DTRvenusマウス)を作成した。このマウスを用いることにより、タンパク、死細胞、細菌由来の抗原に対するCD8T細胞応答にCD8α+DCが必須であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
pDC機能の低下したマウスとして、Spi-B欠損マウスを樹立することができた。また、CD8α+DCの機能的意義を検定できる遺伝子改変マウスとして、XCR1-DTRvenusマウス、XCR1-venusマウスを作成した。XCR1-DTRvenusマウス、XCR1-venusマウスにおいては、CD8α+DCを蛍光タンパクの発現で追跡することが可能であり、XCR1-DTRvenusマウスでは、ジフテリアトキシン(DT)の投与により、任意のタイミングで数日間、CD8α+DCの欠失を誘導することができる。さらに、CD8α+DCを恒常的に欠失するマウス(XCR1-DTAマウス)も作成することができた。これらのマウスを用いて、炎症モデルの解析を進めることができる。
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今後の研究の推進方策 |
樹立したマウスを用いて、自己免疫疾患を含む種々の炎症モデルでの解析を進める。Spi-B欠損マウスについては、pDCの関与が考えられる自己免疫疾患モデルを解析する。また、理研の大野博司先生らとの共同研究により、Spi-B欠損マウスにおいて、腸管上皮系のM細胞が欠失していることを見出した。M細胞は腸管内の細菌、食物由来の抗原の取り込みに関与していると考えられているが、腸管内の恒常性維持にどのように関与しているかわかっていない。そこで、腸炎モデルについて解析を行う。XCR1-DTRvenusマウス、XCR1-DTAマウスについては、細胞傷害性T細胞の関与が考えられる炎症モデルを中心に解析を行う。 また、pDC、CD8α+DCの遺伝子発現プロフィールを比較し、それらの樹状細胞サブセットの特性に関与すると考えられる新たな機能分子を探索し、その機能的意義の解析を進める。
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