計画研究
本研究では、ショウジョウバエを用いて、3つの研究項目(1)新規受容体Gyc76Cとその内因性リガンドによる恒常性維持機構の解明(2)病原体センサーPGRP-LEにより恒常的に誘導されている自然炎症の制御機構の解明、(3)病原体センサーPGRP-LEによるオートファジー誘導に見られる動的移行機構の解明を行い、病原体センサーが病原体成分に限らず自己由来内因性リガンドにも応答し、恒常性維持機構としての自然炎症を誘導しており、その破綻が病態へつながることを明確に示すと共に、その分子的基盤を明らかにすることを目的としている。今年度は、研究項目(3)において、次の様に研究を進めた。哺乳動物でオートファジーの誘導に関わる事が示されているp62のホモログであるRef(2)Pは、酵母のtwo-hyblid系でPGRP-LEと相互作用する。今年度PGRP-LEとRef(2)PがショウジョウバエS2細胞内で複合体を形成することが明らかとなった。さらに、免疫染色により、S2細胞内で、感染したリステリア菌、PGRP-LE、Ref(2)P、ユビキチン化タンパク質、そしてオートファジーのマーカーであるLC3が共局在することが明らかとなった。加えて、Ref(2)Pが、PGRP-LE依存のオートファジー誘導に必要であり、さらに細胞内寄生細菌リステリア菌に対する宿主の感染抵抗性の発現に重要であることを明らかにした。これらの結果は、PGRP-LEによるオートファジー誘導において、Ref(2)Pが重要な役割を果たしていることを示しており、Ref(2)Pがアダプター分子として機能している可能性を示唆している。オートファジーは、ウイルスに対する感染抵抗性にも重要であることが示されている。今年度、Ref(2)Pが、細胞内寄生細菌のみならず、ウイルスに対する宿主の感染抵抗性の発現に重要であることが明らかとなった。したがって、Ref(2)Pは細胞内感染によるオートファジー誘導のプラットフォームとして機能している可能性が考えられる。
2: おおむね順調に進展している
3つの研究項目共に、当初計画していた研究計画を推進し、予定通りの成果を挙げている。領域として中間評価を受け、「自然炎症」という新しい概念に基づき、精力的な研究が行われているという評価であった。
本研究計画は、順調に進展しているために、当初の研究計画に沿って今後も研究を推進する。中間評価時に、領域として内因性リガンドの探索が十分でないという意見があったため、本研究課題においても、新規受容体Gyc76Cの内因性リガンドの同定を強化する。
すべて 2011
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