計画研究
本研究では、ショウジョウバエ自然炎症における内在性リガンド、そのリガンドを感知するセンサー、内因性リガンド放出メカニズムの解明、および、内因性リガンドに応答するカスパーゼ活性動態の検出ツール開発を目指している。ハエは個体レベルでの遺伝学的検索が可能であり、内因性リガンドと病原体センサーの検索に遺伝学を導入できる。我々は、ショウジョウバエ唯一のNOD様タンパク質であるカスパーゼ活性化因子dapaf-1の機能欠損変異体に組織傷害を与えると数日の内に個体死し、その体液中に個体致死活性が存在することを見出した(投稿中)。体液中に存在する新規内因性リガンドを同定するためにオミクス解析を行った。その結果、変異体において損傷後上昇してくるタンパク質が21種類、その中でもmRNAの上昇とリンクするものが12種類同定された。同定されたタンパク質の中には、熱ショックタンパク質や抗菌ペプチド、プロテオグリカン認識タンパク質などが含まれていた。ほ乳類まで保存されている核酸代謝酵素に注目し、核酸成分の代謝経路が個体の致死性にどのように関連するか、遺伝学的手法を用いて確認している。また、病原体センサーの探索としてショウジョウバエRNAi系統を用いて、損傷後致死性を指標にスクリーニングを行っている。これまでに2082系統についてスクリーニングを行い、37遺伝子を同定した。同定された遺伝子の中には、ロイシンリッチリピートを持つタンパク質(未報告)や、GPCRなどのセンサー候補遺伝子が含まれており、遺伝学的手法を用いた表現型の確認やdapaf-1との相関について解析を行っている。
2: おおむね順調に進展している
これまでに行った研究で、自然炎症破綻(dapaf-1変異体における内因性リガンドの過剰増加)のメカニズム解明については現在論文投稿中であり、問題なく進行している。内因性リガンドとセンサーの探索においては、オミクス解析およびRNAiスクリーニングを終え、今後同定された分子の機能解析を遂行させる。同定された分子のマウス・ヒトでの解析は、今後の新学術領域「自然炎症」内共同研究が必要である。
今後想定される問題点としては、オミクス解析で同定された内因性リガンド候補の活性評価において、現状ではリコンビナントタンパク質を用いた、成体注入実験を予定しているが、注入時点での活性維持や修飾によって効果が見られない可能性や、濃度の条件検討が必要である場合が想定され、評価には十分な注意を要する。活性化を評価する他の手段として、共同研究を行っているインフラマソームの活性化を可視化するSCAT1トランスジェニックマウスを用いて、ショウジョウバエの評価同様にマウスにおいても評価可能なシステムの構築を予定している。
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http://www.cdb.riken.jp/jp/02_research/0202_creative27.html