研究領域 | 内因性リガンドによって誘導される「自然炎症」の分子基盤とその破綻 |
研究課題/領域番号 |
21117006
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
倉永 英里奈 独立行政法人理化学研究所, 組織形成ダイナミクス研究チーム, チームリーダー (90376591)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | カスパーゼ / 炎症 / 内因性リガンド / 病原体センサー / ショウジョウバエ |
研究実績の概要 |
本研究では、ショウジョウバエ自然炎症における内在性リガンド、そのリガンドを感知するセンサー、内因性リガンド放出メカニズムの解明、および、内因性リガンドに応答するカスパーゼ活性動態の検出ツール開発を目指している。 ハエは個体レベルでの遺伝学的検索が可能であり、内因性リガンドと病原体センサーの検索に遺伝学を導入できる。我々は、ショウジョウバエ唯一のNOD様タンパク質であるカスパーゼ活性化因子dapaf-1の機能欠損変異体に組織傷害を与えると数日の内に個体死することを見出した。本年度の成果としては、このdapaf-1における個体致死がどのような経緯で生じるか明らかにし、国際誌Cell Reportsにおいて報告した。上皮に損傷を加えた場合、腸細胞においてカスパーゼの活性化が生じ、腸細胞のターンオーバーによって体内の恒常性が維持されて生存するが、dapaf-1の変異体においては、腸細胞のターンオーバーが起こらず、個体死することが明らかになった。我々は体液交換実験により、この個体死の原因がdapaf-1変異体における致死活性因子の蓄積にあることを突き止めた。この致死活性因子の候補因子として、これまでに進めてきたオミクス解析に基づき、解析を継続している。また、病原体センサーの探索としてショウジョウバエRNAi系統を用いて、損傷後致死性を指標にスクリーニングを行っている。これまでに2082系統についてスクリーニングを行い、37遺伝子を同定した。同定された遺伝子の中には、ロイシンリッチリピートを持つタンパク質(未報告)や、GPCRなどのセンサー候補遺伝子が含まれており、遺伝学的手法を用いた表現型の確認やdapaf-1との相関について解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに行った研究で、自然炎症破綻(dapaf-1変異体における内因性リガンドの過剰増加)のメカニズム解明について論文で報告できた。内因性リガンドとセンサーの探索においては、オミクス解析およびRNAiスクリーニングを終え、今後同定された分子の機能解析を遂行させる。同定された分子のマウス・ヒトでの解析は、今後の新学術領域「自然炎症」内共同研究が必要であり、センサーマウスの解析が進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後想定される問題点としては、オミクス解析で同定された内因性リガンド候補の活性評価において、現状ではリコンビナントタンパク質を用いた、成体注入実験を予定しているが、注入時点での活性維持や修飾によって効果が見られない可能性や、濃度の条件検討が必要である場合が想定され、評価には十分な注意を要する。
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