研究概要 |
●メタボリックシンドロームにおける病原体センサーの病態生理的意義に関する検討: 脂肪細胞とマクロファージの共培養を用いたトランスクリプトーム解析を施行し、肥満の脂肪組織における新たな炎症関連遺伝子として、macrophage-inducible C-type lectin(Mincle)を同定した。Mincleは、遺伝性あるいは食餌誘導性肥満マウスの脂肪組織において発現が顕著に亢進した。分担研究者の佐田政隆教授との共同研究により、ヒト皮下脂肪組織においてもMincle mRNAレベルがBMIと正の相関を示すことを見出した。培養マクロファージにおいて、Mincleは飽和脂肪酸/TLR4/NF-κB経路により誘導され、主にMIマクロファージ選択的に発現した。以上より、Mincleは肥満の脂肪組織における新たな病原体センサーと考えられ、脂肪組織炎症におけるMincleの病態生理的意義が示唆される。 ●動脈硬化性疾患における病原体センサーの病態生理的意義に関する検討: 冠動脈バイパス手術を行う患者(CAD群:38例)、および弁形成術を施行する患者(Non-CAD群:40例)において心臓周囲脂肪および皮下脂肪を採取して解析した。CAD群の心臓周囲脂肪においては、Non-CAD群に比べて炎症性サイトカインの発現が亢進しており、脂肪組織中に浸潤したマクロファージの極性(Ml/M2 ratio)と正の相関関係を示した。一方で、M1/M2 ratioと抗炎症性サイトカイン(IL-10,AMAC-1)との間には、負の相関が認められた。冠動脈疾患患者における心臓周囲脂肪組織における炎症反応は、病原体センサーである、TLR1,TLR2,TLR5,MyD88の発現が亢進していた。冠動脈における動脈硬化病変の形成には、冠動脈周囲の脂肪組織における炎症性マクロファージの浸潤と、炎症性サイトカインの発現亢進が影響を及ぼしている可能性が示唆される。
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