計画研究
肥満の脂肪組織では脂肪細胞に由来する脂飽和脂肪酸によりマクロファージにおいて結核菌や真菌を認識する病原体センサーmacrophage-inducible C-type lectin(Mincle)が誘導される。肥満に関連する慢性炎症におけるMincleの病態生理的意義を検討した。遺伝性肥満マウスあるいは食餌誘導性肥満マウス、肥満症患者より得られた脂肪組織において、Mincleの著しい発現亢進が認められた。培養細胞を用いた検討より、代表的な飽和脂肪酸であるパルミチン酸がTLR4を介してマクロファージにおけるMincleの発現を誘導することが明らかになった。高脂肪食負荷によりMincle欠損マウスと野生型マウスの体重差は認められなかったが、Mincle欠損マウスでは耐糖能障害とインスリン抵抗性の改善が認められた。組織学的検討より、Mincle欠損マウスの脂肪組織では、脂肪細胞径の増大と間質の線維化の減弱とともに、肝臓における異所性脂肪蓄積が有意に抑制されていた。ヒトのびまん性冠動脈病変の組織学的解析においては、血管壁における増強した慢性炎症を基盤としており、そこには、マクロファージやTリンパ球の浸潤が認められ、病変内血管新生が亢進していることが明らかとなった。慢性炎症は血管壁のみでなく冠動脈を覆う心臓周囲脂肪組織にも波及していた。又、冠動脈疾患患者(CAD群)では非冠動脈疾患患者(Non-CAD群)に比較して冠動脈周囲脂肪組織におけるIL-1β・IL-6・TNFαなどのサイトカインの発現が有意に増加していた。CD68陽性マクロファージは、CAD群の心臓周囲脂肪組織において有意に増加していた。TLR2, MyD88,NLRP3などの病原体センサーの発現が亢進していた。
2: おおむね順調に進展している
Mincle欠損マウスと野生型マウスの表現型を比較することにより、肥満の脂肪組織の慢性炎症におけるMincleの病態生理的意義が明らかになりつつある。予備的にMincleが脂肪組織の線維化に関与することを示すデータが得られており、新しい展開が期待される。臨床研究についても冠動脈周囲脂肪組織と血管壁の検討も順調に進んでいる。
Mincle欠損マウスを用いた詳細な検討とともに培養細胞レベルの検討を推進することにより、脂肪組織の慢性炎症や組織線維化におけるMincleの機能的意義の解明につなげたい。又、新しいNASHモデルである4型メラノコルチン受容体欠損マウス(MC4R-KOマウス)を用いて肝臓の組織線維化の分子機構についても検討したい。臨床研究の成果を踏まえて基礎研究も充実させていきたい。
すべて 2012 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件) 図書 (1件) 備考 (2件)
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