研究領域 | 内因性リガンドによって誘導される「自然炎症」の分子基盤とその破綻 |
研究課題/領域番号 |
21117008
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
丸 義朗 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (00251447)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | TLR4 / S100A8 / SAA3 / CCL2 / CCR2 / ephrinA1 / ADAM12 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、病原体センサーTLR4の内因性リガンドS100A8およびSAA3のがん転移における意義を解明することである。2つのリガンドのうちSAA3についてがん転移を促進するメカニズムを解明した。 がん細胞が転移する前の肺における血管透過性に注目した。マウス大循環への色素注入で転移前肺は区域性に血管透過性亢進領域を呈し、非透過性領域との遺伝子発現の比較でケモカインCCL2を抽出した。CCL2およびその受容体CCR2のノックアウトマウスにおける実験から転移前肺における血管透過性の主要因子と考えた。このCCL2-CCR2依存性にTLR4内因性リガンドS100AやSAA3の発現が亢進することを証明した。S100A8がSAA3を誘発することはすでの報告している。しかも、TLR4依存性にSAA3は細胞骨格関連チロシンキナーゼFAK活性化をおこし血管内皮細胞の接着の抑制、血管透過性の亢進に結果することを示した。さらに、肺に転移が臨床的に認められない段階で死亡したがん患者肺や不慮の事故で死亡したがんに罹患していない患者の肺におけるS100A8の発現解析から、様々ながん患者の転移前転移においてS100A8の遺伝子発現が亢進することをはじめて示した。 転移前肺における血管透過性のメカニズムとしてS100A8による遺伝子発現が二次的関与する機構を発見した。S100A8によって原発巣の血管内皮細胞やがん細胞においてephrinA1の発現が亢進する。がん微小環境におけるTGFbetaの発現がセリンプロテアーゼであるADAM12の活性化をおこし、これが膜型ephrinA1を切断して可溶性ephrinA1を循環血中に放出させる。これが内分泌的に肺血管床における血管バリアの透過性を亢進させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究班内で研究材料のやりとりや議論が活発になされ、研究の方向性やスピードに大きな影響を与えている。
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今後の研究の推進方策 |
内因性リガンドの存在の有無はいつも実験で使用する細菌由来のエンドトキシンの微量混在が問題となってきた。これを完全に克服するため、化学合成した内因性ペプチドによる転移実験を施行中で、確かに機能することの証明はほぼ完成したと考えている。 また、内因性リガンドの生理的意義を解析するためそのノックアウトマウスを作成した。以上を公表すべく全力で取り組んでいる。
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