研究分担者 |
石黒 浩 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 教授 (10232282)
中村 泰 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 助教 (70403334)
脇田 優仁 独立行政法人産業技術総合研究所, 知能システム研究部門, 主任研究員 (90358367)
住谷 昌彦 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80420420)
宮尾 益知 国立成育医療研究センター, こころの診療部, 医長 (70120061)
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研究概要 |
本年度は,前年度までの研究成果を踏まえながら,本学術領域全体の目標である「ロボットによるよい聞き手の実現」へ向けた研究を行った.研究プラットフォームとしては,昨年度に開発した「微笑み」や「快・不快」などの表情を表出可能で,画像認識により人の動きや表情に同調して動くことが可能なアンドロイド(人間に酷似した外観を持つロボット)の女性版に加えて,男性版を開発した.さらに,アンドロイドの眼球に小型カメラを組み込むことで,アンドロイドの眼球方向を検出可能にした.また,被験者が「同調するアンドロイド」に対して感じる没入感を,皮膚抵抗値のセンシング等を利用して定量化するための装置を購入し,計測システムの構築を行った.ロボットの制御方法としては,人同士の対話を部分観測マルコフ過程とみなし,対話参与者の未来の振る舞いを観測値から予測することに基づきロボットに行動決定をさせるモデル化の枠組みを提案し,対話に参与する人の未来の振る舞いを予測する識別器が,弱識別器として二分決定木を用いたブースティングによって構築できることを示した.さらに,構築された弱識別器を分析し,ロボットの振る舞いが,未来の人の振る舞いに影響を及ぼしうるいくつかのパターンを見出すことができた.以上のシステムを利用して,高齢者施設での認知症予防活動におけるコミュニケーション実験,発達障害児のための学校におけるアスペルガー障害児とのコミュニケーション実験など,コミュニケーションの面で支援が必要な人々を対象としたフィールド実験を実施した.また,前年度に実施した大学病院の外来診察室におけるアンドロイド陪席実験に関して,実験データの分析を行い,高齢者(65歳以上)の患者の方が若年者よりもアンドロイドに対する印象(心理的受容性)が有意に高いこと,アンドロイドが陪席した場合の方が陪席しない場合よりも診察や医師に関する印象が向上したことなどが明らかになった.
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