研究領域 | 現代社会の階層化の機構理解と格差の制御:社会科学と健康科学の融合 |
研究課題/領域番号 |
21119003
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川上 憲人 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90177650)
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研究分担者 |
福田 吉治 山口大学, 医学部, 教授 (60252029)
大平 英樹 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (90221837)
六反 一仁 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (10230898)
島津 明人 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80318724)
荒木 剛 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (00456120)
藤原 武男 独立行政法人国立成育医療研究センター, その他部局等, その他 (80510213)
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研究期間 (年度) |
2009-07-23 – 2014-03-31
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キーワード | 社会医学 / 心理学 / ストレス / 脳・神経 / 遺伝子 |
研究概要 |
1)実態・媒介要因解明:英国の社会階層分類を参考に、職業分類と雇用形態の情報を用いて、日本人を対象にした社会階層分類(J-SEC)を提案し、所得、家の所有、主観的健康、喫煙との関連からその妥当性を確認した。社会階層は、心理的資源を介して健康と関連することを、MIDUS/MIDJA日米比較研究データおよびJ-SHINE第一回調査データから明らかとした。わが国の地域調査データ(WMHJ)では、高い学歴の者では主観的な精神健康は良好だが、気分・不安障害のリスクは高いことが観察された。ワーク・ライフ・バランスと健康に関するデータベース(TWIN study)を用いて共働き夫婦における精神的アウトカム(心理的ストレス反応,家庭生活満足感)のクロスオーバー効果は世帯収入によって異なることが明らかになった。ジニ係数で示される社会格差が出生体重に直接影響していることがわかった。 2)脳画像・生物学的マーカーによるメカニズムの解明:新たに2市区の独身者に対して、続いて4市区の有配偶者に対して協力依頼を送付し、2012年度には成人92名のNIRS測定を実施した。リスク選択課題を遂行している際の脳活動(PET)、自律神経系活動(心拍、皮膚電位反応)、内分泌免疫系活動(コルチゾール、カテコラミン、炎症性サイトカイン、)を同時計測し、年収を基盤としたSESが高い群と低い群の被験者を抽出して比較する実験を行った。2011年度と合わせて民間病院職員202名を対象に、主観的会階層尺度並びに個人収入と心理・行動との関連性を調査。高ストレス群における細胞性免疫とヘルパーT細胞関連遺伝子の特異的な発現低下を明らかにした。さらに、急性心理的ストレス応答性microRNA(Neurosci Lett)、心理的ストレス応答性サイトカイン(Psychophysiology)を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
所得・支出、学歴、雇用状態等の社会経済的要因と生活習慣、予防サービスの利用、循環器疾患リスクファクター、栄養素摂取、精神的不健康、身体的訴え、医療受診との関連の解明が順調に進んでいる。光トポグラフィー検査(NIRS)は被験者数が伸び悩んでいるが、これまで収集されたデータからすでに社会階層と健康の関連の大脳責任部位が解明されつつあり、当初の目標を達成しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
調査対象者を増やし、社会階層によるリスクを伴う意思決定の差異について、前頭前皮質,島皮質,線条体および身体的生理反応の関与をさらに詳細に明らかにする。
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