研究領域 | 現代社会の階層化の機構理解と格差の制御:社会科学と健康科学の融合 |
研究課題/領域番号 |
21119004
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
小塩 隆士 一橋大学, 経済研究所, 教授 (50268132)
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研究分担者 |
阿部 彩 国立社会保障・人口問題研究所, 社会保障応用分析研究部, 部長 (60415817)
浦川 邦夫 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (90452482)
大石 亜希子 千葉大学, 法経学部, 教授 (20415821)
鈴木 亘 学習院大学, 経済学部, 教授 (80324854)
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キーワード | 所得格差 / 貧困 / 子ども / 幸福 / 生活保護 |
研究概要 |
本研究は、所得格差の拡大傾向や貧困リスクの高まりの動学的なメカニズムを解明するとともに、所得格差や貧困が子育てや介護、子どもの健康、就業行動、主観的な幸福度や健康意識に及ぼす影響を検討することを目的としている。3年目の平成23年度においては、主として以下の4つの研究を行った。 (1)厚生労働省「第7回21世紀出生児縦断調査」を用いて、7歳の子どもの社会生活において、社会経済階層による差異が生じているかを分析し、「学校における子どもたちの間の生活体験は平等であるという前提」は存在しないことを確認した。 (2)多目的共用パネル調査「まちと家族の健康調査」の個票データにもとづき、家族や地域との結びつきの程度と公的医療保険制度に対する理解との関連性を分析し、「家族・親戚から受ける支援」や「地域との結びつき」の程度が高い者ほど、「子供の医療に対する地方自治体の公的助成制度」や、「公的医療保険料の金額」について適切に把握する傾向を見出した。 (3)厚生労働省「国民生活基礎調査」(世帯票・健康票、平成19年調査)及び「社会保障実態調査」(平成19年調査)の個票を併せて用いることにより、生活不安の発生メカニズムやその経済的帰結を分析し、社会保障制度の望ましいあり方を検討した。 (4)インターネット調査に基づき、性別・年齢階級・学歴という3つの個人属性に注目して合計40の準拠集団を定義し、自らの所得と準拠集団内の平均所得との差が幸福感・健康感・他人への信頼感とどのような関係にあるかを検討し、全体として相対的所得仮説と整合的な結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、新学術領域研究「現代社会の階層化の機構理解と格差の制御:社会科学と健康科学の融合」を実施する計画班の一つとして、所得格差・貧困をめぐる諸問題を経済学のアプローチで研究してきた。3年目の平成23年度においても、その成果は7本の査読論文をはじめ数多くの論文として結実している。さらに、「まちと家族の健康調査」の個票データに基づく分析を行う環境が整い、それを用いた実証分析にすでに着手している点も評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは、「まちと家族の健康調査」が十分に利用できなかったため、政府等が公表する既存統計に基づく実証分析が中心となっていたが、平成24年度以降は、利用可能となった同調査をフルに活用した分析に研究の力点をシフトさせる必要がある。その際本計画班メンバー間の共同研究だけでなく、ほかの班との共同研究も積極的に行い、「社会階層と健康」という全体的なテーマについて学際的な研究を展開することが求められる。さらに、実証研究だけでなく、所得格差・貧困の発生メカニズムやそれと健康との関係について、ほかの計画班とも連携しつつ、理論的な分析も併せて進める必要がある。
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