研究領域 | 現代社会の階層化の機構理解と格差の制御:社会科学と健康科学の融合 |
研究課題/領域番号 |
21119005
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研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
杉澤 秀博 桜美林大学, 自然科学系, 教授 (60201571)
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研究分担者 |
柳沢 志津子 東洋学園大学, 人文学部, 准教授 (10350927)
原田 謙 実践女子大学, 人間社会学部, 准教授 (40405999)
新名 正弥 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 福祉と生活ケア研究チーム, 助手 (70312288)
杉原 陽子 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 福祉と生活ケア研究チーム, 研究員 (80311405)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 社会関係資本 / 健康への効果 / 地域レベル / 個人レベル / 社会階層 / 緩衝効果 / 媒介効果 |
研究実績の概要 |
(1)地域の社会関係資本の健康への効果とその媒介要因: 社会貢献活動が活発な地域では個人が社会活動を行っているか否かに関係なく健康度自己評価が高かった。この効果は保健行動や健康情報を媒介とするという仮説は支持されなかった。(2)社会階層とパーソナル・ネットワーク:学歴・職業・所得による格差と性差:①学歴が高い人ほど友人が多く、ネットワーク総数に占める親族ネットワークの比率も低かった。②専門・管理職では他の職種と比較して仕事仲間数が多かった。③所得が高い人ほど仕事仲間数が多く、パーソナル・ネットワーク総数も多かった。さらに所得の影響は男性の方が大きかった。④学歴や所得が高い人ほど中距離・遠距離の親族・友人数が多かった。(3)高齢者の保健行動の階層差を媒介する要因:高齢者の食物摂取習慣は学歴による差が有意であった。両者の関係を媒介する要因として、規範、自己効力感などが関係していた。(4)企業退職男性高齢者の地域組織への組織化プロセス:《利己的な動機による参加》《気軽に安心して参加が出来る環境》《料理サークルの魅力を体験》など8カテゴリーが生成されるとともに、カテゴリー間の関係が明らかとなった。(5)地域通貨による高齢者主体の地域づくり:①活動に参加した高齢者は地域貢献と実利の追及を同時に達成しうるものとして地域通貨を見ていた。②地域住民からの感情的拒絶・否定的反応に直面すると、それと向き合い、何とか折り合いをつけていた。③運営の経験には積極的な面と消極的な面の両面が存在していた。(6)文献研究:①健康の社会的決定要因としての社会関係に関する概念と課題の整理。②健康の階層差と社会関係資本との関係に着目した研究の到達点と課題の整理。③社会関係資本の健康への効果に関する理論の整理。④社会関係資本の健康影響に関する質的研究の整理。⑤高齢者における社会階層と健康に関する論点の整理。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究班で設定した独自の研究計画は、ほぼ当初の予定通り進んでいる。今年度の目的は、特に「社会階層と健康」という新領域研究全体における当班の位置づけとして、社会関係資本や社会関係が健康やwell-beingの階層格差の制御手段の候補となりえるかについて、その制御効果の検証と、社会関係資本や社会関係の拡充のための方法論を提示することに置いていた。この点に関する文献をレビューし、論文として発表することで研究の到達点を総括班に示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
統括班では、新しく「政策提言ワーキンググループ」を設置した。その目的は、これまでの研究蓄積をふまえて、健康の階層差を制御するための政策を提言することにある。本研究班の目的は、健康の階層差を制御する要因を、社会関係資本や社会関係の面から解明することにある。本研究班の研究蓄積を踏まえ、政策提言のワーキンググループに参加し、社会関係・社会関係資本の面から健康の階層差を制御するための政策について提言する。
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