研究領域 | 現代社会の階層化の機構理解と格差の制御:社会科学と健康科学の融合 |
研究課題/領域番号 |
21119007
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
片瀬 一男 東北学院大学, 教養学部, 教授 (30161061)
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研究分担者 |
神林 博史 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (20344640)
盛山 和夫 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (50113577)
木村 好美 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (90336058)
中田 知生 北星学園大学, 社会福祉学部, 准教授 (10265051)
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キーワード | 社会階層 / 健康格差 / 社会保障制度 / ソーシャル・サポート / 多目的共用パネル調査 |
研究概要 |
5月に早稲田大学でA06班研究会を開催し、昨年度の予備調査票を検討し、今年度、福岡で行う調査票をほぼ確定した。主要な調査項目は、1)若年層の労働条件とメンタルヘルス、2)社会参加・社会関係資本、3)生活習慣 4)心理項目(ソーシャルスキル、主観的幸福感など)である。 その後、福岡市の各区の住民基本台帳からの標本抽出を行い、25歳から39歳の男女5,000サンプルを抽出した。そして、中央調査社に委託して2月10日~28日の期間で郵送調査を実施中し、1,238票の有効回収票を得た(有効回収率24.8%)。他方、J-SHINEデータの分析を行い、8月に東京大学で行われた「社会階層と健康」国際会議2011で5本および10月に行われた第5回定例研究交流会で4本、第6回定期研究交流会では1本の研究報告を行った。 (1)2005年SSM調査データおよびその他の情報と比較すると、J-SHINEの社会経済的変数は極端に偏ってはいないが、高学歴者および管理職が多いことが特徴となっており、このことが平均収入の高さにつながっている可能性が高い。これらの点については、結果の解釈の際に注意が必要となる。 (2)J-SHINEデータの分析結果からみて、職業特性は労働条件に影響しているが、職業変数の効果は全般的に弱い。労働条件や他の条件をコントロールすると、職業特性が健康アウトカムに及ぼす直接効果はほとんどない。ただし、従来の知見通り、労働条件のうち努力-報酬不均衡とワークライフ・コンフリクトはネガティブな効果を、また同僚からのサポートはポジティブな効果を健康アウトカムに及ぼしていた。 (3)こうした労働条件の影響には大きな性差はみられないが、たとえば男性の場合、健康にもっとも共通して影響する要因は努力-報酬不均衡であるのに対して、女性の場合は、ワークライフ・コンフリクトがもっとも重要な要因となっていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
独自調査実施の時期が、サンプリング作業の遅れなど諸般の事情で年度末となっているが、郵送調査としては標準的なサンプル数が確保されており、それにもとづく分析もほぼ順調に進んでいる。また提供を受けた多目的共用パネル調査のデータについても、現在、予備的な分析が進行中であり、平成24年度にはその成果を報告する準備が整いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ、大幅な研究計画の変更等は予定していない。今後は仙台市での独自の調査研究を経て、福岡市と比較可能なデータセットを整備する予定であり、これで首都圏を中心としたJ-SHINEのデータと、地方都市の若年労働者を対象としたデータがそろい、社会階層(とくに労働条件)や社会関係資本と健康(とくにメンタルヘルス)との関係について、地域差も含めて本格的な分析をすすめ、最終年度の国際学会などでの成果の公表を目指していく。
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