研究領域 | ヘテロ複雑システムによるコミュニケーション理解のための神経機構の解明 |
研究課題/領域番号 |
21120002
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
津田 一郎 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (10207384)
|
研究分担者 |
藤井 宏 京都産業大学, コンピュータ理工学部, 教授 (90065839)
高橋 陽一郎 東京大学, 名誉教授 (20033889)
|
キーワード | 複雑系科学 / 数理物理 / カオス力学系 / 脳神経科学 / 情報工学 |
研究概要 |
研究代表者によって提案、その脳内活動における存在が予言された疑似アトラクター間の遷移ダイナミクスが、コミュニケーションと深く関係する大脳辺縁系、運動-視覚連合皮質などにおいて実証された。また、最近の実験はトップダウン情報のダイナミクスによって入力情報が選択されることを示し、研究代表者らが提唱してきたカオス的遍歴との関係が注目された。本計画研究では、このような背景のもとで、相互作用する脳の情報創成におけるカオス的遍歴の役割を明らかにすることでコミュニケーションにおける脳活動の動的状態を解明するための基盤を与えることを目的とする。本年度の研究成果は以下のとおりである。 [脳内ヘテロシステム間相互作用系] ・相互作用するヘテロな記憶を保持した二つのネットワークがそれぞれの記憶を保持しながら相手の記憶を学習するNovelty-induced learningを確立した。 ・皮質広領域ネットワーク相互作用のコンパートメントモデルを構築し異なる周波数が運ぶ情報がいかに両立してコードされるかに関する研究を開始した。 ・内側前頭皮質-マイネルト核-大脳新皮質注意回路系における幻覚-正覚転移の神経機序の数理モデルを構築するための準備としてレヴューを徹底的に行った。 [ヘテロ力学系ネットワーク系] ・ヘテロ相互作用における情報の制御則の生成を研究し、ノイズ付きのサイン写像を発見した。また、この現象とカオス的遍歴の関係の考察を始めた。 [ランダムな力学系(Noised Dynamical Systems)] ・ノイズ付きサイン写像のシミュレーションを行い、状態の確率的な切り替えが元の相互作用する力学系に現れるカオス的遍歴と類似していることが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
力学系のヘテロ結合系は当初予想しなかった結果を得た。本質的な情報の流れと状態遷移に因果関係が得られたこと。さらに非常に複雑な系のダイナミクスをノイズ付き一次元写像に還元できたことは大きな成果である。また、異なる記憶を持つネットワークの相互作用系がそれぞれの記憶を保持したまま他の記憶を学習するメカニズムはコミュニケーションの時の短期記憶学習に適応可能であり、予想した以上の成果であった。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画全体の変更の必要はない。今後は、コミュニケーションのためのミラーニューロンモデルを数理的に確立すること。 脳内ヘテロネットワークの異なる周波数によって運ばれる情報の合理的なコード方式を見つけること。そのうえで、幻覚と正覚の機構を解明し、コミュニケーションにおける正しい理解と誤解の神経機構を解明する。さらには、上で得た大きな成果をコミュニケーション実験に応用することを考える。
|