研究領域 | ヘテロ複雑システムによるコミュニケーション理解のための神経機構の解明 |
研究課題/領域番号 |
21120002
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
津田 一郎 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (10207384)
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研究分担者 |
藤井 宏 京都産業大学, 名誉教授 (90065839)
高橋 陽一郎 東京大学, 名誉教授 (20033889)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 複雑系科学 / 数理物理 / カオス力学系 / 脳神経科学 / 情報工学 |
研究実績の概要 |
研究代表者によって提案、その脳内活動における存在が予言された疑似アトラクター間の遷移ダイナミクスが、コミュニケーションと深く関係する大脳辺縁系、運動―視覚連合皮質などにおいて実証された。また、最近の実験はトップダウン情報のダイナミクスによって入力情報が選択されることを示し、研究代表者らが提唱してきたカオス的遍歴との関係が注目された。本計画研究では、このような背景のもとで、相互作用する脳の情報創成におけるカオス的遍歴の役割を明らかにすることでコミュニケーションにおける脳活動の動的状態を解明するための基盤を与えることを目的とする。本年度の研究成果は以下のとおりである。
[脳内ヘテロシステム間相互作用系] ・大脳新皮質内側側前頭前野および眼窩野と側頭葉、マイネルト核の相互作用により、視覚野からの情報経路が確立し、トップダウン注意によって視覚世界を理解する機構の数学モデルを構築した。特に、側頭葉から前頭葉への経路の中でアセチルコリンのニコチン性リセプターであるα7の欠損によって視野の一部にまったく異なるパターンが映し出されるレビー小体型認知症の特徴的な幻覚を再現するモデルの構築に成功した。 ・判断において迷いが生じるときの脳の数理モデルを二種類のドーパミンリセプターの動作を導入することで構築した。 [ヘテロ力学系ネットワーク系] ・二つの均質なモジュール構造から以下にしてヘテロなネットワーク構造が分化してくるかの研究を行い、情報伝搬最大原理のもとでそれが可能になることを発見した。 [ランダムな力学系 (Noised Dynamical Systems)] ・ヘテロ相互作用をする力学系の縮約モデルであるノイズ付きサイン写像のシミュレーションと解析を行い、カオス的遍歴的な振る舞いを観察し、解析した。 ・ミラーニューロンシステムの数理モデルを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
レビー小体認知症の典型的な症例である視野の部分的幻覚を説明する数理モデルの構築に成功したことは予想をはるかに超える成果である。また、均質モジュールからヘテロ結合が生じる分化のシミュレーションに成功したことも予想をはるかに超える大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度が最終年度であるので、上記の特に進展した研究をさらに発展させ論文発表を行う。また国際会議でも発表を行い、その成果を国際レベルで発信していく。その他の研究に関しても引き続き継続して研究し、きめ細かいグループディスカッションを繰り返すことで大きく飛躍することを目指す。
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