計画研究
力学系を拡張して、生命システムの自律的発展の理論を開拓した。主要な結果は以下のとおりである。1.入出力関係の学習、記憶と自発活動:昨年度までに、力学系のフローの変化(分岐)として記憶をとらえる描像を展開した。今年度は昨年度までに導入した学習モデルに相関のある入出力マップを逐次的に繰り返し学習させた。するとその相関の応じて入力をカテゴリー化させることが自発的に生じた。この時、カテゴリーは相空間内の階層的構造として記述され、入力が強くなるに従い、細かいカテゴリーの分別が生じることが示された。一方で時間的にみたときに、まず大雑把なカテゴリーに対応するアトラクターに漸近、ついで、細かく分かれたアトラクターへと分類されることが示された。これは我々が認知する過程と対応している。さらに入力がないときは、このようなカテゴリー構造を内包する自発神経活動が生ずることを示した。また、分岐としての記憶スキームが積分―発火型ニューロンモデルにおいても「分岐による記憶描像」がうまく働くことを示して、ノイズに対する安定性を明らかにした。2.速い変数の集団カオスによる遅い変数のカオス的遍歴:多数の速い変数と1つの遅い変数が結合した力学系において、見出した状態遷移が、速い変数を消去して得られる、遅い変数の運動をあらわすブランチ間の遷移で表現されることを明らかにした。さらに、この遷移が集団的カオスによる、確率的遷移であることを示した。3.進化におけるルシャトリエ原理:環境変化によって生じた表現型の変化が打ち消されていくように遺伝的進化が生じることを大自由度反応系の細胞モデル力学系のシミュレーションで明らかにした。この補償度合いが多くの成分で共通であることを見出し、その理論を構築した。これにより、進化や学習でゆっくり変化する生命システムの可塑性と安定性(ホメオスタシス)をあらわす数理的基盤を与えた。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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