研究領域 | ヘテロ複雑システムによるコミュニケーション理解のための神経機構の解明 |
研究課題/領域番号 |
21120006
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
相原 威 玉川大学, 工学部, 教授 (70192838)
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研究分担者 |
酒井 裕 玉川大学, 脳科学研究所, 准教授 (70323376)
藤井 聡 山形大学, 医学部, 教授 (80173384)
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キーワード | 情報統合 / 海馬 / 聴覚野 / トップダウン / 可塑性 |
研究概要 |
近年、ボトムアップ情報のみに依存した外界モデルの形成メカニズムは実験的にも理論的にもかなり明らかになってきているが、情報創成の視点から見たトップダウン機能を実現するメカニズムに関する研究はほとんどない。本研究ではトップダウンの作用として、報酬・罰や注意などに応じた感覚情報(ボトムアップ情報)統合への修飾に注目し、個体の目的に合わせた脳内モデルの自己組織化を可能にするメカニズムを探る。ボトムアップとトップダウンというヘテロな系の相互作用ダイナミクスを実験と理論の両側面から明らかにすることで、コミュニケーションの脳内神経機構を探る糸口としていく。具体的には下記の2つの研究を行った。 1.細胞レベルのトップダウンとボトムアップの相互作用:海馬CA1野及び歯状回のローカルなネットワークにおいて報酬系や注意などにかかわるトップダウン入力が、いかにニューロンにおけるボトムアップ型情報の統合に影響を与えるかを調べた。結果として注意などに関わるトップダウン入力としてのアセチルコリンが、CA1野のボトムアップ入力による可塑性を促進することが分かった。また海馬歯状回でのトップダウン入力の影響を調べる前実験として、樹状突起の近位ブランチへのボトムアップ入力同士が非線形加算を行っていることを明らかにした。 2.ネットワークレベルのトップダウンとボトムアップの相互作用:皮質間ネットワークのレベルにおいても、ボトムアップ的な異なる入力の連合学習が、トップダウン入力の状況下でどのように影響を受けるかを調べてきた。結果として恐怖条件付け後に、電気刺激のみでも聴覚野応答が起きることが分かり、ネットワークレベルにおけるアセチルコリンの役割を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞レベルの実験として行ったCA1野における、トップダウン入力としてのアセチルコリンがボトムアップ入力(CA3からの入力)の可塑性に与える影響の結果は、Neuroscience誌に、またネットワークレベルの結果はCognitive Neurodynamics誌に掲載できた。
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今後の研究の推進方策 |
中間評価において、領域全体に対し実験と理論面での研究の融合を強調された。当研究課題においては理論系の研究者との共同研究に発展がみられたが、それをさらに推し進めていきたい。
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