研究領域 | ヘテロ複雑システムによるコミュニケーション理解のための神経機構の解明 |
研究課題/領域番号 |
21120006
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
相原 威 玉川大学, 工学部, 教授 (70192838)
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研究分担者 |
酒井 裕 玉川大学, 脳科学研究所, 准教授 (70323376)
藤井 聡 山形大学, 医学部, 教授 (80173384)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 情報統合 / 海馬 / 聴覚野 / 可塑性 / トップダウン |
研究実績の概要 |
脳内の外界モデル形成には, 外界からのボトムアップ(感覚)情報だけでなく, 注意や情動などによる広範囲調節系と呼ばれる内因性の情報も融合する必要がある. 海馬や皮質などの神経回路への調節系の信号は, 集中時などに内在性アセチルコリン(ACh)として放出され, 記憶に関与するとの報告がある. そこで,本研究はボトムアップ入力の統合に対するAChによる修飾を以下2つの実験で検証することを試みた. 細胞レベル:ラット海馬CA1野におけるACh放出時のスパイクタイミング依存性可塑性について調べてきた. 平成24年度は,ホモシナプティックな刺激も含め可塑性へのAChの影響を調べた.結果として, AChの存在下で長期増強(記憶)が促進され長期抑圧(忘却)が妨げられ,その修飾メカニズムにおいて抑制性細胞の局所ネットワークが重要なカギを握ることが明らかとなった.結果は,Neuroscience,Brain Research,Advances in Cognitive Neurodynamics IIIに報告し出版した. ネットワークレベル:モルモットに対して純音と電気刺激による恐怖条件付けを行い,条件付け前後における聴覚野の応答変化について光計測で調べた. その結果,電気刺激による情報が扁桃体→前脳基底部を経て聴覚野へAChを放出し,ボトムアップ入力(音情報)と連合を起こし,電気刺激のみでも聴覚野が応答することを発見した. 結果をまとめ国際学会誌CognitiveNeurodynamics,Advances in Cognitive Neurodynamics IIIに発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はボトムアップ入力の統合に対するAChによる修飾を以下2つの実験で検証することを試みてきた. 細胞レベル:ラット海馬CA1野におけるトップダウン信号としての内因性AChによる可塑性への修飾様式をしらべ,結果としてスパイクタイミング依存性可塑性及びホモシナプティックな刺激による可塑性へ影響を明らかにした.このことにより,平成24年度までの目標を達成できたと思われる. ネットワークレベル:モルモットに対して純音と電気刺激による恐怖条件付けにおける聴覚野の応答変化については,電気刺激のみでも連合学習によって聴覚野が応答することを発見した. この結果は予想を超える結果であり,次の実験につながる重要な知見となった.よって平成24年度の目標以上の達成ができたと思われる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究はボトムアップ入力の統合へのトップダウン入力としてのAChによる影響を2つの実験により検証してきた. 細胞レベル:ラット海馬CA1野におけるトップダウン信号としての内因性AChによる可塑性への修飾様式を明らかにしてきた.しかし今までは,抑制性細胞の影響については薬理学的に抑えた状態での実験であったため考慮していなかった.次年度は,抑制性入力の影響を加味する実験を行い,海馬CA1野ローカルネットワークにおける抑制性入力も含めたトップダウン―ボトムアップ情報統合様式を明らかにすることを試みる. ネットワークレベル:モルモットに対して純音と電気刺激による恐怖条件付けにおける連合学習後の,聴覚野の応答を明らかにしてきた.次年度は,聴覚と体性感覚に加え視覚情報の条件付け学習を行い,光計測法により連合学習による3領野における応答の変化を調べ,皮質間の応答の相互作用を明らかにしていきたい.そしてその連合に対していかにAChなどのトップダウン情報が影響を及ぼすかを明らかにしたい.
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