計画研究
本研究では、人間が過去の経験から将来の行動を計画し、現在の状況に即してこれを動的に更新、想起、遂行する認知脳メカニズムについて、記憶の形成と運用、将来展望と計画立てなどの複数のプロセスの連関に着目しながら検討する。この検討を通して、複数認知プロセス間の相互連携に関わる神経ネットワーク間のコミュニケーション機構と、その個体間コミュニケーションに果たす役割の解明を目指す。本年度は、昨年度の研究で明らかにしていた、情報源(情報を誰から得たか)あるいは情報伝達先(情報を誰に伝えたか)の記憶に関わる脳活動の分離を、2者間記号コミュニケーション課題時の被験者の脳波分析に応用した。無意味な記号を組み合わせたメッセージを2名の被験者が互いに交換することにより、両者の意思や意図が有効に伝達される人工言語システムを構築する課題において、「相手から得た情報の記憶」と「自己が発信した情報の記憶」を基にした自己の課題行動の計画立ての戦略を分離して検討する方法を開発した。これらの行動戦略に応じた頭表脳波パターンの特徴を、脳波パワーの時間-周波数特性や、異なる脳波チャンネル間での周波数位相同期のネットワーク構造の観点から解析した。その結果、自他の記憶情報に応じた行動の計画立てが、脳波の異なる空間部位(チャンネル)、潜時(時間帯)、周波数帯の活動に分離して表現されており、チャンネル間の位相同期ネットワークの構造も両行動戦略の間で異なるという知見を得た。さらに、2名の被験者の間で、同一の行動戦略に対応した同期ネットワークの類似度が高まっていた。このような共通ネットワークの発現が、2者間で共通の意思伝達システムの形成の一端を担うと考えられる。本研究の実応用の試みとして、携帯型脳波計による脳波計測データを用いたモバイル情報端末制御のシステムの改良も進め、脳活動による情報端末制御の正確性の向上を実現した。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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