研究領域 | ヘテロ複雑システムによるコミュニケーション理解のための神経機構の解明 |
研究課題/領域番号 |
21120009
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中村 克樹 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (70243110)
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研究分担者 |
中村 徳子 昭和女子大学短期大学部, 子ども教育学科, 講師 (90425702)
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キーワード | 動作理解 / 動作模倣 / 乳幼児 / サル / コミュニケーション / 障害児 |
研究概要 |
これまでに、幼児と障害児における実験体制を整え、実験系を立ち上げることができた。これは、分担研究者(中村)と連携研究者(佐々木)の協力を得て出来たものである。その体制で、絵本を題材として健常児と障害児の視線計測実験を実施した。これまでに数十例を超える障害児から視線計測を実施することができた。その結果から、健常児が絵本の登場人物の顔や手に視線を非常に集中させ、その中でも特に眼を頻繁に注視していることが明らかになった。それに対し、自閉性障害児を中心とした障害児では、健常児に見られたような視線の集中が観察されず、登場人物の顔や手だけではなく、体や足や描かれているすべての対象を広く偏りなく見ていることが明らかになった。ただし、何も描かれていないところを長く見つめるようなことはなく、やはり登場人物から情報を得るために注視していることを示唆する結果でもあった。また、アカゲザルを対象として、自閉症等の発達障害と深い関連がある扁桃核と前頭前野のニューロンが動作を見たときにどのような応答を示すかを検討した。扁桃核でも特に中心核のニューロンが情動的な動作をカテゴリーごとに区別する傾向が強いこと(Kuraoka and Nakamura,in press)、前頭前野のニューロンは情動的な動作よりもコミュニケーションに関連する動作に強く応答することなどが明らかになった。扁桃核中心核の役割は、情動情報を情動行動の発現と直接関わる脳領域に伝達することである。これらによって前頭前野と扁桃核の役割の差異が見えてきた。この点は、脳全体のシステムを理解する上で非常に興味深いと考えている。ま準、言語や音楽の基礎となるリズムの記憶に関する脳機能画像研究も推進した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた研究員が大学教員として就職できたため、研究組織を再編成したことで予定より時間がかかった。また、所属部局においてサルの疾患が蔓延したことでも研究が遅れた。しかし、平成23年度には論文がまとまり、現在も投稿中および投稿準備中の論文がある。これまでの遅れを取り戻し研究が展開できてきていると評価できる。また、これまで中心的に研究を推進していた研究者が平成24年度から大学教員として就職できた。また、新たな研究組織を考え、遅れのないように推進していく。
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今後の研究の推進方策 |
今後はデータ取得が困難な障害児からのデータを精力的に集め、早期に結果を論文としてまとめる。また、これまでの研究のペースを落とさないためにも、平成24年度後半から新たな研究員を雇用する。
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