研究概要 |
社会場面における作業分担の自律的発生における脳認知メカニズムのモデル化に関してH21年度は,モデルの基本構造の探索と,実験装置としての対人コミュニケーションロボットの構築を行った. モデルの基本構造の探索に関しては,作業分担が機械的・確率的な探索ではなく,人間が行うような社会的状況での自律的な発生を可能とするための,最低限の機能要素とその制御を概念化した. その概念とは,自己については,目的とするタスクの理解と,その中で自分の取れる行動の認識が必要である.その機能はそのまま他者についての理解にも必要であり,他者におけるタスクの理解,その中で他者が考える自身の取れる行動の認識についての推定が必要である.そしてその両者の組み合わせとしての役割分担によるタスク実行の発生過程のモデル化と,さらにはその効果についての自己と他者の共通認識の発生までが必要と考えられた. そのような協調的な役割分担を検討・実現するツールとして,高い対人コミュニケーション機能を持つロボットを開発した.そのロボットは,音声認識と合成,顔とジェスチャーの認識,室内の地図構築と移動計画と実行,事物を操作するためのアーム,リアルタイムでこれらを統合的に実現するための管理ソフトウェア等を備えている.これにより,人と向かい合った場面での最低限の他者の行動認識が可能となりそれに他者の意図推定に必要な他者モデルが実装されたなら,そのモデルの精度に応じた行動決定や支援が可能となると期待される.他者モデルに関しては,他者の隠れた内部状態としての疲れ・覚醒度を行動から推定する行動実験を開始した.
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