研究概要 |
ユビキチンと酵母ユビキチン加水分解酵素(YUH)が形成する過渡的複合体を、常磁性緩和増大(PRE)を利用したNMR解析により高感度で検出するために、スピンラベルの導入部位を検討した。12種類の部位に対して修飾反応を行い、修飾率と観測されるPREの大きさを調べた。その結果、これまでに確立していたT40に加えて、E43,E220へのスピンラベルの導入およびPREの観測に成功した。これにより、検出されるPREの数が約3倍に増大しただけでなく、過渡的複合体では、ユビキチンのG10近傍、A46近傍、C末端のいずれもT40,E43,E220に近接しており、両者が様々な向きを向いているという結合様式が新たに明らかになった。 さらに、導入する常磁性金属の種類を検討した結果、従来のガドリニウムイオンだけでなく、マンガン、鉄、バナジルイオンでのPREの検出に成功した。いずれの金属でも、ガドリニウムイオンより約2倍大きいPREが観測された。さらに、観測されたPREの大きさと運動性がない時に各金属が誘起するPRE大きさをプロットすることで、最終的に形成される複合体と過渡的複合体では結合・解離の交換速度が異なり、それぞれ約50s^<-1>,1,000s^<-1>以上であることが新たに明らかとなった。 このような過渡的複合体をユビキチンが迅速に形成することは、YUHだけでなく多様な蛋白質とconformational selectionのメカニズムでの複合体形成を迅速に行う上で重要であると考えた。
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