研究領域 | 過渡的複合体が関わる生命現象の統合的理解-生理的準安定状態を捉える新技術- |
研究課題/領域番号 |
21121003
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
神田 大輔 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (80186618)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | タンパク質 / 分子認識 / 細胞内輸送 / プレ配列 / ミトコンドリア / Tom20 / 結晶コンタクト効果 / 融合タンパク質 |
研究実績の概要 |
タンパク質の結晶構造は結晶中の分子間の接触の影響を受けて,取りうる状態の1つに固定されている.これを結晶スナップショットと呼ぶ.問題はスナップショットを多数集めても,リガンドの結合状態の運動性を正しく表現できないことにあり,これを「サンプリング問題」と呼ぶ.この問題を実験的に解決するために,リガンドの周囲に結晶コンタクト効果フリーな“隙間”を結晶格子中につくる新技術の開発を行っている.対象として,Tom20タンパク質に結合した状態のプレ配列ペプチドの大きな運動性を定量的に解析する.3つの技術要素は,①タグタンパク質との融合タンパク質を用いる,②タグタンパク質と対象タンパク質を一本の長いヘリックスを用いて硬く接続する,③占有率を保障するために分子間ジスルフィド結合を用いて,リガンドを対象タンパク質にテザリングする.である.特に③はリガンドの占有率を100%に保証するために必要で,本研究の以前の成果を活かすことができる.モデルビルディングから挿入配列の長さを選択し,4残基とした融合タンパク質MBP-Tom20の結晶構造を実際に得ることができた.設計通り2つのタンパク質は一本のヘリックスで接続されていて,挿入したリンカー部分もヘリックスを形成していた.さらに結晶格子の隙間にプレ配列の結合部位が向いており,隙間の体積も十分であった.次に,ラットALDH由来のプレ配列のC末端にシステイン残基を導入し,Tom20とジスルフィド結合を形成させ,MBP-Tom20-SS-pALDHの結晶を得て構造解析を行った.モデルバイアスを避けるために,分子置換の際にはプレ配列に相当するモデルは置かなかった.差フーリエ電子密度マップをつくると,結合サイト付近にプレ配列ペプチド由来と思われる棒状の電子密度を得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
従来にはなかったまったく新しい技術である「結晶コンタクト効果がない空間をタンパク質結晶格子内に創出する」する方法を考案し,実際に実現可能であることを予想外の短期間で示すことができた.
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今後の研究の推進方策 |
棒状の電子密度がタンパク質のリガンド結合部位に存在することが示せたが,これを定量的に解釈する方法論を開発することが今後1年間の課題である.
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