トロンボポエチン(TPO)受容体Mp1は、造血幹細胞の維持と血小板の産生を担っている。Mp1がTPO結合に伴い二量体を形成することが、シグナルを伝達する上で必須である。本研究では、蛍光標識したMp1を全反射蛍光顕微鏡で一分子観察し、一分子ごとの蛍光強度と拡散運動を解析することで、二量体の形成や制御機構を調べた。Mp1を蛍光標識するために、血球系細胞株FDC-P2に、ACPタグ配列と融合させたMp1を発現させた。次に、蛍光性有機化合物DY-547を結合した補酵素Aを、ACPシンターゼによりACPタグに共有結合させた。一分子蛍光顕微鏡による観察の結果、TPO非存在下でも約30%のMp1が二量体を形成していることが分かった。また、TPO添加に伴い約50%のMp1単量体が新たに二量体を形成した。また、メチル-β-シクロデキストリン(MBCD)で細胞からコレステロールを除去するとMp1二量体の存在比が減少したが、TPO添加に伴うMp1の二量体形成は阻害されなかった。蛍光標識したコレラ毒素を用いて細胞膜上の脂質ラフトにあるGM1を検出し、Mp1の局在と比較したところ、両者の局在は一致せず、Mp1の二量体形成はコレステロールにより促進されるが、Mp1そのものが脂質ラフトに局在して二量体形成を制御されているのではないことが分かった。次に、Mp1の拡散運動を解析した結果、Mp1のコンパートメント内滞在時間はコレステロールに依存することが分かった。一方、コンパートメントの大きさ(約200nm)はコレステロールの有無でほとんど不変だった。これらの結果から、血球系の細胞にはコレステロールに依存する新規の膜骨格が存在することが示唆された。
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