研究概要 |
本研究では、特定のタンパク質を選択的に小分子プローブによりラベル化する新手法/技術を開発し、様々な分光学的手法でタンパク質の動的構造とその機能解析を可能とするための新しい方法論の確立を目的としている。複数のタンパク質から構成される過渡的な準安定複合体を分光学的手法により特異的に検出するためには、シグナル発信するプローブ分子を特定のタンパクへ部位特定的にラベル化する技術が必須となる。この様なタンパク質ラベル化技術は、各班の研究を実施する上で基盤となる最も重要な技術の一つである。本研究では、1H-NMR,19F-MR,蛍光、EPRなどの多様な検出モダリティに適用可能な高感度プローブ分子を標的タンパク質に選択的にラベル化する新しい手法の開発を行い、他の解析研究を中心とする研究班との連携により、タンパク質準安定複合体の高精度、高感度での機能解析法を確立する。これにより分子生物学的手法とは異なる相補的な化学的アプローチにより新学術領域として本領域が目指す"動的な構迄生物学"の発展に貢献したいと考えている。 本年度は、我々が独自に発明したリガンド連結DMAP触媒法では、昨年度、膜蛋白質の高効率ラベル化に手がかりをつかんでいたが、今年度、そのラベル化速度、効率および蛍光ラベル化された膜蛋白質GPCRの蛍光挙動を、アンタゴニスト依存的にオフオンすることに成功し、生きた細胞表面でのラベル化だけでなく創薬スクリーニングなどの機能解析にも応用できる可能性を実証した。また、これまで我々が開発して来たリガシド指向性トシル化学とは異なる反応機構で、タンパク質選択的なケミカルラベリングを実現する「リガンド指向型アシルイミダゾール化学」を新しく見出し、この反応特性に関して、精製タンパク質を中心に検討を進め、細胞への展開の可能性に関する検証を行った。
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