計画研究
我々はこれまでに、細胞内にある状態での、タンパク質のNMRスペクトルやESRスペクトルを取得し解析する手法を開発してきた。また、この「In-cell NMR/ESR法」によって細胞内タンパク質の分子間相互作用、プロセッシング、運動性・安定性が原子レベルで解析可能であることを示してきた。本研究ではこれら手法を中心として、細胞内や細胞表層で形成される過渡的なたんぱく質複合体のその場(in situ)観察・解析のための手法を開発する。本年度は、フッ素^<19>FのNMRを用いたHeLa細胞でのIn-cell NMRの開発を重点的に行なった。我々は、これまで、^1H-^<15>N HMQC法を用いてIn-cell NMRを行なっていたが、二次元測定のため測定に時間がかかるという難点があった。^<19>Fによる部分標識を行なうことにより、一次元測定でもNMRシグナルを分離でき、そのため、測定時間の短縮が可能となる。まず、モデルタンパク質として、FKBP12を用い、そのフェニルアラニン(Phe)残基をp-フルオロフェニルアラニン(^<19>F-Phe)としたタンパク質を調製した。これを我々が開発したTAT-Ubタグを用いてHeLa細胞内に導入し、細胞を回収後、NMR測定を行なった。FKBP12には合計五つの^<19>F-Pheがあるが、当該In-cell ^<19>F NMRスペクトル中に、これら五つのNMRシグナルを観測することができた。本手法により測定時間および細胞の量が、ともに従来の半分以下でも十分に解析可能なスペクトルを得ることができた。さらに、FKBP12と相互作用するとされる免疫抑制剤FK506およびラパマイシンとの相互作用を細胞内で検出することに成功した。
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