計画研究
私は昨年までにマウスT細胞およびヒト乳癌細胞株において、ケモカイン受容体であるCCR7の活性が別の受容体であるCXCR4シグナルにより亢進することを明らかにしてきた。本年度はこの現象の基盤となる分子機構について詳細な検討を行った。CXCR4 リガンド処理、非処理の条件下で CCR7 発現レベルをフローサイトメトリーで解析したところ、顕著な変化は見られなかった。一方蛍光顕微鏡下での発現解析では、CXCR4 リガンド処理条件下で細胞膜への CCR7 リガンドの局所的な結合促進が観察された。また CXCR4 リガンド処理では、 CCR7 リガンド非依存的な CCR7 ホモダイマー形成の促進および、局所的な CCR7/CXCR4 ヘテロダイマー形成の促進が観察された。以上の結果から、 CXCR4 リガンドで誘導される CCR7 反応性亢進のメカニズムとして、① CXCR4 結合分子 により 細胞膜上で CCR7 ホモダイマーおよび CCR7/CXCR4 ヘテロダイマー形成が形成される。また CCR7/CXCR4 ヘテロダイマーの局所的集積が誘導される。② ①の結果、細胞膜局所の CCR7 リガンド結合能が上昇する。③ ②の結果、CCR7 リガンド誘導性細胞遊走が亢進する、という一連の経路が関与する可能性が考えられた。一方、第二の研究テーマとして、接着分子CD44の立体構造平衡がin vivoにおけるがん細胞動態に重要である可能性の検討を行った。各CD44変異体を遺伝子導入した乳がん細胞株MCF7を獲得し、トータルイメージングシステム(IVIS)を用いてがん転移能との相関解析を試みてきた。この解析から、特に活性型CD44を発現するがん細胞を移植したマウスの死亡率が高い傾向がみられるという予備的な結果を得た。今後この結果の統計学的有意性について検討する必要がある。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
PLoS One
巻: 8 ページ: e83681
10.1371/journal.pone.0083681
生体の科学
巻: 694 ページ: 398-399