本研究では(A)経済学で主に考慮されるゲーム理論的な意思決定状況での相手プレーヤーの行動への情動的反応の影響とその脳内のメカニズム、(B)マーケティング分野で主に考慮される意思決定への介入に対する情動的反応の影響と脳内のメカニズムを解明し、意思決定に与える影響を分析する。機能的MRIの専門家と連携し、経済学者が脳活動を変数として取り込んだ経済学的構造モデルを構築・推定する。神経基盤における情動的反応を操作した場合についての反実仮想分析を行い、情動が意思決定に及ぼす影響を計量経済学的に分析する。2個体同時計測が可能なfMRIを利用し動学ゲームにおける情動的影響の被験者同士の影響も観察可能とする。本研究の目的は、(A)ゲーム理論的な戦略的相互依存関係下での意思決定及び(B)介入がある場合の意思決定において脳内で具体的にどのような機構が関与することで、情動的反応が影響を与えるかのメカニズムを突き止めることにある。この為、機能的MRIを利用しながら経済実験を行うことで、(A)の場合は相手プレーヤーの行動直後、(B)の場合は介入の直後の脳内での情動的反応の程度を機能的MRIにより観察し、そのデータを用いて被験者の次の行動に情動的反応の程度が及ぼす影響について経済学的な構造モデルを推定し統計的に分析する。 本研究遂行にあたり、本年度は前年度までに領域代表である機能的MRIの専門家と研究代表者と検討を重ねてきた具体的な実験計画について、より詳細な実験計画をまとめ、実験を開始した。生理学研究所における2個体同時計測可能な機能的MRIについても、準備を整え実験を開始した。また、データ処理と実験準備及び文献調査を行うためのリサーチアシスタントの雇用を進め、広く採用した。 なお、本年度は学会やワークショップ・セミナー等に出席し、広く情報収集し、本研究に活用するよう努めた。
|