研究領域 | デジタル‐人間融合による精神の超高精細ケア:多種・大量・精密データ戦略の構築 |
研究課題/領域番号 |
21H05067
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
伊藤 正哉 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 認知行動療法センター, 部長 (20510382)
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研究分担者 |
村中 誠司 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (90878349)
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研究期間 (年度) |
2021-08-23 – 2024-03-31
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キーワード | 音響 / 音声 / 音響バイオマーカー / うつ / 人工知能 / 音響特徴量 |
研究実績の概要 |
本年度は、精神症状識別モデルにおいて精度向上に寄与すると考えられる特徴量を選定し、機械学習により精神症状を識別することが可能かを探索的に検討することを目的としていた。研究実施にあたって、臨床試験のデータを二次利用して解析にかけるための倫理的な問題事項を整理し、現行の倫理指針に準拠する形で計画を立て、承認を得た。今年度は、臨床試験に参加した成人患者及びその面接者130名分の治療前・中・後・4ヶ月後追跡時に測定した約520時間の症状評価時の音声データのうち、105名の治療前の音声データに対して、音声編集ソフトAudacityを用いて精神症状評価ラベルを付与した。これらのデータは解析用にサンプリング周波数16kHzのwav形式に変換した。これらデータに対して、GRID-HAMDの各設問についての聴取時間の区間を示すタイムスタンプをアノテーションし、ラベルデータを作成した。この際、うつ病の中核症状として重要な抑うつ気分と、予備解析で感情ラベルにバリエーションの見られた罪責感を選択した。評価スコアが0から4だった男女1名ずつの計10名を対象とした。音声データに対しては、既存の特徴量抽出器を用い、音声から特徴量を得た。その結果、重症度が高い4のスコアにおいて特徴的な分布が認められた。このことから、症状が特に重い患者における音声上の特徴が示唆された。面接者の音声でも同様の特徴が認められたため、患者の症状が重い場合に、面接者も特徴的な話し方をしていることが推測された。非常に少数の解析のため、今後の検証が必須である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
倫理的な問題を慎重に検討し、倫理委員会の承認を得て研究を進めることができた。音声データのアノテーションには引き続き時間を要して進めているが、当初予定していた計画に基づき、少数のデータでも今後の推進が期待できる結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、データのアノテーションづけ等の加工を行う。次年度の前半までデータの加工に注力し、年度後半に約2ヶ月間をかけて解析を行う予定である。また、新たに健常者に対してGRID -HAMDを実施し、データを得ることにより、うつ症状の低い人のデータを加えることにより、より幅広いデータからうつ症状と関連する音声の特徴量を抽出することを検討している。
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